忘れられない人

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待って頭がついていかない。どうして私が透さんとお見合いをするの? 「驚いたよ。すごく綺麗になってて、なんだか直視できないな」 「え?」 本当に少し戸惑った様子の透さんは、言葉どおりに視線を逸らした。 あ……綺麗になったって、美砂のこと? 「そうですね。少し痩せたし、ミントグリーンのドレスもよく似合ってますよね」 「……ん? ミントグリーンは美砂でしょ。俺は沙穂ちゃんの話をしてるんだけど」 「え!?」 やっと私たちの視線がかち合う。彼はたしかに、私を見ていた。 「すごく似合ってるよ。沙穂ちゃんのそんな姿を俺が独占していいのかな。食事はフレンチの『アルカンジュ』に予約をしてある。エスコートしてもいい?」 目の前に腕を差し出され、腕と顔とを交互に見た。 待って、まだ私はよく分かってない。 「だ、大丈夫ですっ。……とりあえず中で話しましょう」 彼の腕はとらず、私は行き慣れたレストラン・アルカンジュへと自分の力で歩きだした。
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