忘れられない人

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〝うそ!〟と心の中で歓喜した。子供のようにお粗末なお願いでさすがに自分でも苦しい気がしていたのに、まさか了承してくれるなんて。 やはり、透さんは今でも美砂が好きなのだろう。一度私の婚約者になるというステップを踏んででも、この計画に乗ったのが何よりの証拠。 そうでなければ透さんにメリットはない。御曹司の彼にはオトワリゾートの経営権に魅力はないだろうし、そうなると手に入れたいのはただひとつ、美砂だ。 「ありがとうございます透さん。よろしくお願いします」 姉との仲を取り持てば、私の望みも彼の望みも、すべてうまくいく。 「こちらこそ。よろしく」 透さんは爽やかな表情に戻っており、テーブルを挟んで握手を求められ、私はそれに応えた。 手を持っていかれるくらいに力強い。 「きみのお父さんにご報告してくるね」 透さんは内ポケットからスマホを出し、レストランの入り口を視線で示してから席を立つ。私は会釈をしておまかせした。 しばらくして、ビジネスマンとしての彼の声がかすかに聞こえてくる。 これでいい。 透さんと姉が結婚すれば、私もようやくこの気持ちを消し去れる。
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