消せない過ち

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『手紙を書けば読んでくれるかもよ』 姉の顔はパッと明るくなった。私もつい顔が緩む。 しかし彼女は、レターセットを私に返してきた。 『沙穂ちゃん、ナイスアイディア! さっそく、書いてくれる?』 え? 『そんな。お姉ちゃんが書かないと……』 『無理だよぉ。私は文章考えるの苦手だもの。沙穂ちゃんは得意でしょう? ねぇお願い』 それじゃ意味ないって……。 『お願い! ……だめ?』 私がその顔に弱いって知ってて、んもうーー! 『……分かったよ。これっきりだからね?』 ついに降参すると、彼女の顔はさらに明るくなった。 『ありがとう!』 美砂はうれしそうに部屋から出ていき、私の手には桜のレターセットが残された。せめて一緒に考えてくれたらいいのに、美砂ったら私に全部押し付けるつもりだ。 こうなったら後回しにせず、さっさと書いてしまおう。便箋を一枚出し、机の開いたスペースに置いてみる。 ペンをかまえ、一行目に【とおるさんへ】と書いた。
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