消せない過ち

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私も異性とほとんど接してきておらず、姉が交流に夢中になる気持ちが分からないわけではない。それでも男性に怖いイメージがあったのに、透さんのように思慮深く、素敵な人もいるなんて。 姉は彼からの手紙を私に残し、代わりにブレスレットをつけたまま自室に戻っていった。 とっておいたお気に入りのお菓子箱に、この手紙をしまった。 美砂がいらないのなら、私の宝物にしよう。 ◇◇◇ それで結局、やりとりは一年も続いたんだっけ。私は過去の手紙たちに触れながら、その頃を思い返す。 何気ない日々の出来事やお互いの話を綴った手紙は、ふたりの世界を作り出した。 二ヶ月した頃には美砂への手渡しをやめて、お互いの住所に送り合うようになる。宛名は美砂なのに私がポストからとって読んでいた。 当時それにどっぷりハマった私は、自分と姉の話の区別もつかなくなり、彼に対する気持ちも勝手に大きく膨らんでいき。 やりとりを始めて一年が経ち、ついに決定的な手紙が送られてきたのだ。 私は手紙の束からそれを選び、手にとった。 すべて同じ封筒に見えるが、宛名の字の癖には微妙に違いがあり、飽きるほど読み込んだ私は、どの手紙に何が書いてあるかを覚えている。 中の便箋を開いた。たしか、最後の行。 【手紙で伝わるか自信がないけど、実は、きみのことがすごく気になっている。迷惑かな】
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