恋人みたいな時間

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細い息になりながら彼に身を任せていると、私はいつの間にか助手席に座っていた。 うちの家族に見送られながら車庫を出て、道路へ沿って大きくハンドルを切る彼に、さらに緊張が高まっていく。 景色は家の敷地から街中へ移り変わった。 「沙穂ちゃんごめんね。突然誘って大丈夫だったかな」 メッセージでは少し強引に感じたが、直接だと優しく尋ねてくれる透さん。 私はホッとして、やっと声が出た。 「はい。とても楽しみにしていました。晴れてよかったです」 「俺も。楽しみにしてた」 本当? こっそり彼の表情を見られるミラーはないか、車内を目で探したけど、どこにもなかった。 目線はどこへやったらいいのかな。私は映画館のごとくフロントガラスの景色を見つめる。 赤信号で停まる。透さんがこちらへ顔を向けたのが、気配で分かった。 「……今日めちゃくちゃかわいいね」 わっ……。 私は視線を下、自分の膝へ移した。 動揺しすぎて「あっ、えっ」と変な声が出る。恐る恐る運転席に目を向けると、透さんは柔らかい笑顔を浮かべていた。
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