忘れられない人

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「ほら透くんって次男でしょう? お兄さんが会社を継ぐから、自分はまったく別の道に行ったみたいで」 姉の言葉にうなずきつつ、特集の文字も目で追ってみる。 【三鷹透、『株式会社ウォールサポート』コンサルタント兼マネージャー】 ウォールサポートはコンサルティング会社最大手。たしかうちの会社も取引していたはず。 「偶然、これからオトワリゾートのプロジェクトを透くんが担当するんだって。だからこの間、パパに挨拶に来てたのよ。そのときに私と面識があるって話してくれたみたい」 なるほど、そういうこと……! それってかなりすごいんじゃないかな? 私も卒業してからオトワリゾートの総務を手伝っているけど、父と仕事の話ができる二十代の人なんてあまり見かけないのに。 「二十七歳でマネージャーって本当にすごいのよ! いつも出入りしているコンサルタントさんたちを統括する人なんだって。お父さんも言ってたわ。さすが、何でもできる透くん」 美砂は両手を乙女のごとく握り、彼に思いを馳せている。 「……どうして私も会うの?」 こちらもつい気持ちが盛り上がったけど、透さんと姉が会うのに妹の私がノコノコついてくるのはおかしい。 いつも姉のついでの存在で、向こうはそこまで認識していないだろうし。 「沙穂ちゃんに会いたいってさ」 「そんなの社交辞令に決まってるでしょ!」 動揺しすぎて食い気味に叫んでいた。
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