本当の想い

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それから数日、サークルに顔を出し、乙羽美砂を観察して感じたことがある。 手紙を書いているのは、おそらく彼女ではない。別人だ。 本人は自分をかごの鳥だと認識している素振りはまるでなく、こちらから見ても、そうは思えない。直感的で破天荒な性格をしている。 なにより、彼女が書いたサークルの入会届で確認すると筆跡の違いが一目瞭然だった。 お嬢様だというならなおのこと、誰か頼みやすい人物が家の中にいてもおかしくない。 誰だろう。気になる。 『本当は誰が書いているの?』と聞けばいいはずだが、なぜかそれでは終わってしまう気がした。 返事を書こう。乙羽美砂に書いているふりをして、実際の人物とやりとりをしたい。 【手紙をくれてどうもありがとう。今まで気付かなくてごめんね。きみのことはとてもよく分かったよ】 相手と同じ質量の文章で。できるだけ誠実に映るように。 【ーー次男の俺は気楽だけど、きみはどうかな。つらいことも多いだろう?】 話してほしい。相手は俺と同じ悩みを抱えていた。向こうの話を聞けば、自分のことも分かる気がしてならなかった。
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