―…あかいろ…―

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幸い血は大して出なかったし、痛みもそんなに残らなかった。 会社に着いてから、絆創膏でも貼ってもらおう。 噛まれた後を見てから、また俺は歩きだした。 「しっかし、なんなんだ…赤くなった世界といい、点滅した犬といい……」 駅が見えてきたが、何だか違和感を感じる。 人が沢山居るのに、パニックになっていないんだ。 こんな常識外れの出来事に巻き込まれて、何で皆いつも通りなんだよ。 誰かに聞いてみようとも思ったが、そんな勇気俺にはなかった。 「……会社に着いたら、田中にでも聞いてみよう」 同僚になら軽く聞けるだろう…と考え、俺は足早に電車に乗り込む。 「あれ…今、電車も点滅していたような……」 そう、さっきの犬のように点滅している電車に。
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