女神様にTS逆ハ〜両刀使い転生を頼んだら妹と人類が大変なことになった!

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 ラノベのような現実が目の前にある!  例の神様がここにいるのだ。  表紙買いする読者層なら一度は憧れるであろう「転生をつかさどる神」だ。  ヒャッハー!  俺は足がないくせに小躍りした。  俺の死因? みなまで言うな。トラックだ。別に引きニートでもブラック企業の捨て駒でもなく、月収十三万でのんびりと暮らしていた。  そこへ、エルフが襲い掛かった。エルフと言ってもロリロリいや〜んな娘じゃなく、いすゞの十トン車だが。  まぁ、春風の悪戯に見とれていたら後ろからポックリってやつさ。  今どき、女子高生のスカートを覗いても有難みは薄いが、男の健全な条件反射が俺と運転手の人生を狂わせた。  あの娘、0分丈スパッツというのか? 黒いむっちりとしたヒップがたまらなかったな。  トントンと肩を叩かれて余韻から醒めた。俺の転生神は丈の短い白衣を着た金髪美人で耳が尖っている。 「希望の転生先と言われてもな〜。可もなく不可もなくまったりと生きてきたからなぁ。特に前世に不満はない。出来れば生き返らせてくれ」  俺は正直な気持ちを伝えた。お猫様とラノベとスマホと京アニがあればお腹いっぱいです。  ところが、女神は俺の骨壺を見せてくれた。埋葬早ッ! ていうか、もう五周忌かよ!!  彼女に連れられてフヨフヨと俺は下界へ降りてきた。  けっこういい霊園じゃないか。たんまり賠償金が入ったんだろうな。運転手も気の毒に。  俺を勘当した筈の父親や元母親が悲嘆に暮れている。手を引かれている幼女は俺の妹か。二人とも元の鞘に収まったのか?  つか、オヤジもカーチャンも早ぇ〜よ。 「お兄タソ♪」  あどけない声が俺を呼ぶ。 「紗理奈のお兄たそは死んじゃったんだ」  オヤジが妹に手を添えて合掌させる。 「そうだよ。紗理奈はもうすぐお姉ちゃんになるのよ」  なに? お ね え ち ゃ ん だと?  俺は母親を見やった。  願ってもないチャンスだ。よし、俺は決めた。現代日本に転生する! それも妹として!!  よくあるネットのウザ可愛い姉自慢みたく、俺も紗理奈姉ぇとあれやこれやするのだ。  そのうち、異世界から魔王やら破壊神が攻めてくるだろう。絶対来る。出戻り転生の定番(テンプレ)だ。ね~ちゃんを健気に守る妹。萌えるぜ。   「おい! 転生はよ!!」  俺は転生神に希望を述べた。どうせ現代に転生するなら異能バトルな人生を歩みたい。  立て板に水のごとく、ラノベで学んだ転生オプションを並べ立てる。  前世記憶保持はもちろんのこと、紗理奈といちゃコラしつつ……。 「チート無双で逆ハー? そう、言われましても」  女神さまは困惑した顔で俺に質問を浴びせた。 「まず、チート無双が曖昧ワードです。具体的に定義してください」 「チート無双ったら、あれだろ。まず無双つーのは……例えば、山よりもデカい敵をワンパンとか」 「釣り合いの取れない相手を一撃するのですね。なるほど。で、チートとは?」 「わかりやすいイメージで言えば、例えば……ホラ、加速装置だよ! あれほど端的なチートはない」 「降って湧いたような瞬発力と反則に近い回避スキル?」  彼女は面倒くさくなったのか、俺の記憶を読み取った。 「そうだ。俺的に面倒くさい術式だのアイテムだのは要らない。シンプルイズベストだ。だいいち、ファイターの陰で呪文を唸るとか女々しいだろ。男なら、こう、ブスっと!」 「わかりました……タ……タタッ!」  俺がバスタードソードを振り回すしぐさをしていると、突然、女神の姿が不鮮明になった。身体のあちこちにノイズやジャギーが生じている。 「おいっ! どうした?」  彼女は俺の呼びかけに答えず、ザリザリと不協和音をがなり立てる。 「ぴゅー、ピピッ。シツレイ致し致し致した後は丁寧に拭きましょう生姜昭和和尚が…ザリ! 失礼いたしマした!」  ようやく正常化した女神に俺はおそるおそる声をかけた。 「神様の癖にバグるとか、大丈夫か? つか、本当に転生できるの俺? 心配になってきた」 「ご心配をおかけしました。申し訳ありません。先ほど、予期せぬ負荷がかかりまして」 「負荷? 全能の神様が過負荷ってどういうことだよ? 包み隠さず説明しろやコラ!」  彼女が言うには、自分はAI、アーティフィシャル・イノセント――すなわち、人造神だという。  あまりにも転生トラック事案が増えすぎたので、神手不足を解消すべくデウス=エクス=マキナが人間界に転生業務をアウトソーシングしたのだという。  製造元はテロ防止の為だとか何とか言って教えてくれなかった。そりゃそうだ。数多の運転手が目の敵にするだろう。 「機械を司る神か。八百万の神様も大変だな。で、そっちのシステムダウン?は、回復したの?」 「おかげさまで無事に復旧しました。ご心配をおかけしたお詫びとして貴方様には特別な転生オプションをご用意するよう上の方から言われております」 「特別プラン? 上の方って?」 「私どもの運営でございます」 「ちょwww運営ww。で、運営がトラブった見返りに転生オプションばら撒くってか?」 「はい。一時的な過負荷で手続きが滞り、ごめいわくをおかけしました」 「マジ? これが本当の神運営だな! で、何でもありなの?」  彼女がニッコリとうなづくので、俺はかねてより欲しかった属性を所望した。男ならわかるだろう? 念願かなって女にTSした暁にゃ、ヤリたい事が山ほどある。 「女子に生まれて百合百合三昧と思いきや、男子にも心惹かれる両刀使い。で、逆ハ〜でよろしかったでしょうか?」 「そうだ。回避加速チートと強敵ワンパンも忘れるな!」  俺は紗理奈の妹に生まれ変わる日を思うと居ても立っても居られない。ムクムクと欲望が沸き上がる。 「逆ハ〜というのは女子に囲まれるハーレムではなく、同時多発的ストーカーと解釈してよろしいですね?」  AIはどうしてこうもまどろっこしいのか。鬱陶しいほどに確認を繰り返す。この仕様、どうにかならんか。 「ま、そんなもんだろ。転生はよ!」  俺は面倒くさくなったので、あとは全て「おまかせ」にした。神を代理するAIなら、上手に取り計らってくれるだろう。  ……  …………  耳障りな低周波と異常な空腹感で俺は目覚めた。  もう、腹が減って腹が減って仕方がない。俺は猛烈な飢餓感に突き動かされて食料を探し求める。  眼下に巨大な山脈が荒波のごとくうねっている。  いや、黒光りする水面に見えたのは、人だ。  人、人、人、ベールを被った民族の大移動だ。老若男女、全身をすっぽりと布で覆っている。  それにデカい。さながら、巨人の何とかという漫画そっくりの行軍が俺の真下を往く。  ああ、もう辛抱たまらん!  俺はその中の一体めがげて急降下した。  欲しい!  欲しい! あの男のアレが欲しい!  体内を熱い欲望が駆け抜けていく。  ああっ! オトコ!  俺はアツい部分を突き立てた。  一撃離脱! 「うぉっ!」  巨人が悶絶する。ずしりと地響きを立てて昏倒し、手足を痙攣させている。 「パパっ!」  娘らしき巨体が寄り添う。  俺はその顔に見覚えがあった。ずいぶんと美少女に育ったものだ。 「お、俺に構うな。そいつを確実に殺せ! でなければ人類は……」 「喋っちゃだめ!」 「か、母さんを…しっかり、守っ……」  巨人は金属製の円筒を娘に渡すと、程なくして息絶えた。 「パパのかたきーッ!」  彼女が殺意に満ちた目で俺を睨む。その悲しみをたたえた目じりに俺は欲情した。  紗理奈、アネ、オンナ、ホシイ!  俺は霧状のガスをしこたま浴びた瞬間、すべてを悟った。確かにAIは仕事をした。逆ハ〜、回避チート、男女見境なし。条件は満足している。  だが……。  さいわい、チート能力のおかげで一射目は回避できた。  紗理奈は仲間がしとめたようだ。カッと目を見開いて微動だにしていない。  巨人どもは身重の女性を守ろうと円陣を組む。俺と仲間は翅を震わせて偵察情報を交換した。。  むざむざ、ここで殺されてたまるもんですか! 俺……アタシにはいっぱい産む使命があるんだからねッ!
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