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「ゲームに参加してくれる百名様の厳選、並びにゲームに使用する物の準備などで相当な時間をくってしまいまして、皆さまのいた世界の日付で言えば十月の一日。ようやくゲームの開始に至ったのです。いやはや、応募していただいてから、大変お待たせいたしました」
申し訳なさなど微塵も示さず、女性が続ける。
「えー、意識しかない皆さま、つまりは気温を感じることができない皆さまには分からないかもしれませんが、見ての通り、この大広間の気温は大変、低い状況にあります。わたくし、この寒空の下、ドレス一枚なのですよ。先程から平然と喋ってはいますけれど、今すぐにでも火にあたりたい気分なのでございます。次回からは焚火でも焚いておきましょう」
わざとらしく二の腕を摩って見せる女性。彼女の服装は、肩を露出させたセクシーなドレス姿で、寒さと、ついでに言えば動きにくさがウィークポイントになる服装だった。
「故に、一方的に、もとい円滑にルール説明を終わらせようと思ったわけです。そのためには、皆さまの意見やざわつき等のような進行を妨害する要素の排除、そして」
彼女は空に浮かぶ白銀の月を指差して「この世界を説明会の会場に選び、実際に異世界に転移できる、ということをあらかじめ証明しておき、『異世界転移』という報酬の存在を確固たるものにしておいたのです」
指を下げて彼女は微笑む。目論見通り、余計な野次が飛んでこないことや、一方的な進行ができていることに満足しての微笑みなのかもしれない。なので、この集会が終了次第、皆さまは元の世界に帰ることになります、と言って、さらに言葉を続ける。
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