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「前置きが長くなりましたが、それではいよいよ、ゲームの内容について説明していきたいと思います。フリップやプレゼン用スライド等はありません。全て口頭となりますので集中して聞いてくださいね」
準備不足のまま講義を進める講師よろしく早口に説明を開始した。
「異世界転移権争奪ゲームは、わたくしが指定したターゲットをデリート、つまり殺害、をするミッション系のゲームとなっております。ゲームの間、ミミック、アイテム、コンパスと、三つのゲームアイテムの使用や十の決まり事がございますが――」
暗記してきた台本をそのまま読んでいたかのように話していた彼女だったが、自分を取り囲む、見えない百名の雰囲気が一変したことに気づいて、あれ、と暗記文の朗読をストップする。
「八割ほど、顔色が険しくなられましたが、いかがなさいました?」彼女の声音がより優しいものに変わる。
「……って、『殺害』の部分が引っかかったのですよね」彼女はうーむと頭を抱える。人殺しも厭わないような奇人百名を集めたつもりだったのに、とブツブツぼやいている。「人らしい部分は残っているというわけですか」小声で言い、大きなため息を一つ吐いて口を開く。
「安心してください。殺害するのは、この城、この国、果てはこの大陸一つを滅ぼした超極悪人。ユア・ポーカという名の、女です。煮て焼いて喰って殺そうが、誰も咎めはしない大罪人なのですよ」
仮面から覗く彼女の瞳は遠くを見据え、忌々しそうに細くなる。他人目に見ても私怨を滲ませていることは明らかで、「失礼」とルール説明を中断して私怨を滲ませてしまったことを彼女は詫びた。
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