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美奈とは二年前にある合コンで知り合った。事前に見せてもらった写真にこれといっていい女がいなかったので全く期待せずに参加した合コンだった。とりあえず参加費分の元を取ろうとしてついつい飲み過ぎたのが間違いのもと。ひどい頭痛で目覚めるとそこは美奈の部屋だった。まぁ、よくあることだ。俺は泊めてくれた礼を言い連絡先すら交換することなく美奈の部屋を後にした。美奈は何か言いたげにしていたが結局何も言わないまま俺を見送った。
その数日後のことである。駅前のコンビニでばったり美奈と再会した。何となく気まずい感じで軽く挨拶を交わしその場は別れたのだが、生活圏が同じだったせいでそれからもちょくちょく顔を合わせることがあった。今となってみればどうしてそんなことをしたのか全く思い出せないのだが、ある時俺は美奈を食事に誘った。そしてそのまま何となく美奈の部屋へ行き、何となく男女の関係を持った。
美奈は使い勝手のいい女だった。しつこく連絡をしてくることもなければブランドもののバッグをねだることもない。それに抜群に料理が上手かった。気が向いた時に彼女の部屋に行き手料理を食べそのまま部屋で過ごす、というのが定番でどこかに出掛けることなどほとんどなかった。それでズルズルと続けてきたのだがそろそろ頃合いかもしれない。
翌週、俺は美奈をカフェに呼び出した。別れを告げるためだ。美奈が俺に惚れ込んでいるのはわかっていたから、さぞかし泣いたり喚いたりするだろうと憂鬱な気分だった。別れの理由はいろいろと準備している。あとは出たとこ勝負だ。久々に外で会えるのが嬉しかったのだろう、美奈は上機嫌で俺の前に座っていた。
「俺たちもう終わりにしよう」
唐突に投げかけられた別れの言葉を聞いた瞬間、美奈の顔からスッと表情が消えた。思わず身構える俺に彼女は能面のような顔を向けると平板な口調で「わかったわ」とだけ告げ席を立ち俺に背を向けた。どれだけごねられるかと覚悟していた俺は拍子抜けした思いで美奈の背中を見送る。何だか狐につままれたような気分だったがそれ以降美奈が俺に連絡してくることはなかった。
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