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「あなた、顔色悪いわよ、大丈夫?」
香織の声にハッと我に返る。真奈美は後ずさりした俺の足に取り縋り口を尖らせてイヤイヤをしていた。いつもの真奈美だ。さっきは美奈にそっくりだと思ったがもう一度冷静になって見てみるとそれほど似ているとも思えない。
(勘違い、か。ちょっと疲れているのかもしれないな。次の休みは久々に家でゆっくり過ごすか)
まだ少し心臓がバクバクしていたがそれも疲れのせいだろうと自分に言い聞かせ真奈美を抱き上げる。
「ほら、ママの言うことを聞きなさい」
そう言って真奈美を渡す。だが香織が真奈美を受けとめたその瞬間、真奈美は香織の腕に思いっきり嚙み付いた。
「痛いっ」
香織の腕から血が滴る。真奈美は香織の腕から逃れ再び俺の足に縋りついた。
「おい、真奈美、いくらなんでもやりすぎだぞ」
さすがに強い口調で窘める。すると真奈美は唇から真っ赤な血を滴らせながら俺を見上げてニタリと笑った。
「いいじゃない、ね、あともう五分だけ」
完
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