夜はこれからEX

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その時、彼の言葉が脳裏に思い出される。 ――すっごい我慢してる。 今夜はお預けかと思った時に、切実な声音で告げられたそれが今の表情と重なって、たまらない気持ちになった。 早くひとつになりたい。彼のものにしてほしい。ともすれば閉じようとしていた脚を自ら広げて、彼が腰を進めやすいようにする。 ようやく最後まで収めきることができた時は、安堵でくたりとシーツに身体を預けた。それを見た友紀は軽く口元をつり上げた。 「今からでしょ」 囁きながら軽く腰を揺らめかされて、意思に反して高い声があがり、つま先がピンと持ち上がる。 「痛くない?」 「ぅ、ん……」 時間をかけてもらったからか、痛いとか怖いという感覚はまったくない。どちらかというと、予想外に気持ちが良くて困ってしまう。 初々しさというか、こういうことに慣れていると思われたら嫌だな、と思う。 「っ、あ」 そこで軽く腰を打ち付けられて、思考が途切れる。じわっと奥が波打つのもわかった。 「はぁ、もう、……」 不明瞭な呟きも途中で聴こえなくなる。まとわりつく蜜ごと引き出され、中が切なく疼いた。再び満たされると、粘膜が押し込められた熱杭にまとわりつく。歓迎するように締め付けて、それが新たな刺激になる。 「あぁ、ん、ぁ……」 ゆっくりされているのに、それともゆっくりされているからか、柔い襞が埋められたもののおうとつまでをしっかり感知して食い締める。 もったいぶるような動きで優しく抽挿が繰り返されると、下腹部の深いところに集まって留まる甘い熱が今にも弾けそうで、少しだけ足りなくて、訳が分からなくなっていく。 「ちょっとがまん、して」 声をかけられて目を開くと、友紀の顔が近くなっていた。 何を?と問い返す間もなく、今までより強く中を穿たれる。自分の中から何かが引きずり出されるようで、生理的な涙が目の縁ににじんだ。 「っあぅ、ひ、やあ……!」 感極まるに従って、声が抑えきれなくなる。嬌声にまじって荒い息遣いが耳に届き、さらに煽られていく。 シーツの上で身もだえながら与えられる快楽に溺れる時間がどれくらい続いただろうか。 一番深くまで入った熱杭がさらに奥にせり出そうと動くので、勝手に身体が逃げようとする。けれど上から腰を強く押し付けられているためにその場から動けない。 「あ、んぅ、あああっ」 ひときわ高い声がほとばしり、つま先に力がこもる。恥骨同士がぐり、と押し合うくらい密着して、身体の奥深くを叩かれたかと思うと、彼が深く息を吐いた。 胸が重なり、呼吸と共にしっとりと濡れた肌が触れ合う。 「はー、……」 乱れた前髪に半分隠された瞳は情事の名残りに濡れて、こちらをじっと注視している。長いまつ毛が気だるげに上下して、熱いため息が胸元をかすめた後、腰が引かれた。 「ふ、っう」 胎内を埋めていたものがずるりと抜け落ちて、背筋が震える。 解放された隘路がきゅんと疼き、空虚さを訴えた。波動が止められず、腹筋が痙攣してしまう。 顔を横へそらしてこめかみを冷えたシーツに押し付けていると、目元に柔らかいものが触れた。 キスされている、と理解して視線を上げたところ、唇にも口づけが落とされる。 「すき」 まだ肩を上下させながら、やっとという感じのかすれた声で囁かれ、胸の中心がきゅうっと引き絞られる。 情事の後特有のだるさが身体を包むけれど、とても幸せだった。 力の入り切らない腕をやっとの思いで持ち上げて、しっとりと濡れた背中に回す。 身体にかかる重みが心地いい。
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