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「熾月様」
鈴を転がすような声に名を呼ばれ振り向けば、セーラー服姿の美しい少女が立っている。庭の手入れをしていた着流し姿の男は手を止め、少女の姿を淡い金の瞳に映すとふ、と口角を上げた。
「撫子。学校帰りか?」
はい、と可愛らしく笑んだ少女は視線を男から庭の花に映す。色とりどりの花は見ているだけで心が華やぎ、自然と頬が緩む。
「お前は花のように可憐で愛らしいな、撫子」
「もう、熾月様…」
男の言葉に少女は恥ずかしそうに頬に紅葉を散らす。艶やかな濡れ羽色の髪、長い睫毛に覆われた薄い紅色の瞳。白く透き通った頬に差す朱、ふるりとした桜色の唇。どこをみても美しく───そして、ひどく情欲をそそられる。
「ここで立ち話も何だろう。先に家に上がっているといい」
「では、お言葉に甘えてそうさせていただきますね」
先に少女を居間へ上がらせ、男も後に続く。学校帰りにこうして彼の家を訪れ、少女の学校での話や、庭に咲いている花や、天気の話など取り留めのない話をするようになったのは果たしていつからだったか。さすがに出会った当初は男の家に上がることに少女は遠慮と僅かな警戒心を抱いていたが、それも徐々になくなり今ではすっかり毎日のように足を運んでいる。
男も少女も、二人でゆったりと過ごすこの時間が好きだった。
だが、そんな和やかな時間は───唐突に終わりを迎える。
「熾月様」
「どうした?撫子」
ふいに名を呼ばれ、少女を淡い金の瞳に映せば薄い紅色の瞳を伏せ、うっすらと頬を桃色に染めている。その様は、誰もが見惚れるほど愛らしい。───…が、それは自身ではなく別の誰かを想っての表情なのだと、男は悟ってしまう。
「…わたし、恋人ができたのです」
恥じらいと幸せを含んだ、小さな声。それは、一目見たときから少女に心を奪われた男にとって死刑宣告に等しい。
目の前の無垢で可憐な花に、自分以外の男が触れるというのか。嫉妬、というには生易しすぎる。ああ、きっとこれは憎悪だ。
「それで、今度熾月様ともお会いしてほしいのです。とっても良い方なんですよ」
男の心情などお構い無しに、少女は花笑みながら言葉を続ける。
「…熾月様?」
男が何も言わないのを不安に思い、こてんと首を傾げ名を呼ぶ。
淡い金の瞳が少女を映す。男のどこか暗い影が差す瞳に、少女は思わず華奢な身体を震わせる。
「熾月様…?どうされたのですか…?」
男はゆっくり立ち上がり、少女の側まで近付いていく。
(───…怖い)
男の危うい雰囲気に少女は漠然と恐怖を感じる。逃げなければ───何か、大切なものを失ってしまう気がして。自身を奮い起たせて立ち上がろうとするも、それより早く男の手が少女の細い手首を掴み、そのまま押し倒される。
「いやっ、熾月様…!離してください!」
ここまでくれば何をされるのか分かったのだろう。少女は恐怖に抵抗するも、手首を掴まれ覆い被されていては何もできないに等しい。
「…俺は、一目見た時からお前に心を奪われていたのだ。撫子」
男はゆっくりと口を開く。掴んでいた少女の手首から柔らかな頬に愛おしげに手を滑らせる。まるで、恋人にするような触れ方と睦言。
「恋人ができたなど、どうして享受できようか。俺はお前を愛しているのだ。───撫子。お前を、他の男などに渡せるものか」
頬から、首筋へ手を滑らせ。男の整いすぎたかんばせは、いっそ恐ろしいほど。
「い、やっ…!やだ、やだぁっ!」
少女の首筋に男は顔を埋め、舌で舐め上げる。ざらついた感触が気持ち悪くて、薄い紅色の瞳の端に雫が浮かぶ。
「いや…!熾月様、やめてくださいっ…!何故こんなことを…!」
「言っただろう、撫子。お前を他の男に渡すものか。…それに、男の家に足を踏み入れるということは、こうして手篭めにされようとは予期していなかったか?」
「…それ、は…熾月様は…こんなことしない、って…」
きゅっと唇を引き結ぶ少女に男は、は、と自嘲気味に笑う。自分は、"男"としてみられていなかったのとそう言われてるようで。
(…ああ、いや。実際そうなのか)
十以上も年も離れているのだ。少女からしたら兄のような対象なのだろう。だが、自分にとっては。
「…なあ、撫子。俺はお前を一目見た時から"女"としてみていた。白く透き通った陶磁器のような肌も、桜色の唇も。全てが愛おしくて───…ひどく、そそる」
「熾、月様……」
初めて知った自分に対する男の欲望に少女は背筋が粟立つ。
(…そんなこと、知りたくなかった)
十以上も年は離れているものの、少女は男に兄のような親しみと安心感を抱いていた。どこか浮世離れした雰囲気も、ふと見せる柔らかい笑みも、月のような淡い金の瞳も。男が少女に抱く感情とは違うが、少女も男を好いていたのだ。…只しそれは、恋慕の情と、親愛の情。男と少女のそれは、一生交わらない。
先ほど男に問い掛けられた問いをぼんやりと思い出す。男の家に足を踏み入れるということは、こういう事態になることを予期していなかったのかと。
男に対する絶対の安心感と信頼感があったからこそ、少女は幾度も訪れていた。そんな道徳から外れた行為をするはずがないと、確信にも似た信頼。それに、彼とたわいもない話をする時間が好きだったから。ただ、それだけだった。
(…それだけだった、のに)
どうしてこんなことになったのだろう。
「お願い、します…熾月様…。こんなこと、やめてください…!」
声が震える。自分に覆い被さってる男が、知らない男にみえて恐怖を感じる。間近でかち合う淡い金の瞳は何の感情も読み取れない。
少女の言葉に男は何も言わず、再び細い首筋に顔を埋める。ちくりとした痛みが走ったが、今の少女にはそれが何を意味するのか知る術はない。
「撫子」
瞳の端の雫を、優しさを伴いながらそっと人差し指で拭われる。───そして、唇に男のそれが重なり、僅かな隙間から男の舌が少女の口内へと侵入する。
驚く暇もなく舌を絡め取られ、蹂躙され。呼吸の仕方を忘れたように、少女はただ喘ぐしかなく。
「んっ、う……!」
「っ、は………」
ようやく唇が引き離されたことに安堵し、少女は涙目になりながら肩で息をする。その度に上下する控えめな膨らみ、どちらかともわからない唾液で濡れた少女の桜色の唇。───その光景が、ひどく艶かしく。男は自身の唇を舌で妖艶に舐め、満足そうに口角を上げる。
最初の口付けをあっけなく奪われ茫然とする暇もなく、男は少女の制服をたくしあげる。
「やっ、いやぁ…!」
可愛らしい下着に包まれたそれ。男は器用に片手で留め具を外し、邪魔だと言わんばかりに乱暴に投げる。
「いやっ、見ないでください…!」
姿が露になった少女のふるりとした白い双丘に男は、ほう、と感嘆の息を吐く。
滑らかな曲線を描くまろやかな胸。大きさは控えめであるが、男にとってそれは然したる問題ではない。そして、桜色の頂は何とも扇情的で、下半身に熱は集まる。
「ああ…愛いな、撫子」
淡い金の瞳が恍惚の色に染まり、少女は羞恥から顔を背けることしかできない。
「こうして男に見られるのも、触れられるのも初めてなのだろう?」
「っ、…………!」
少女の反応に自分が紛れもなく初めてだということを確信し、男は優越感に口元に弧を描く。
「まあ、俺がお前の最初にして最後の男になるのだがな」
「───…え……あっ、ひゃうっ!」
男の言葉に少女は背筋がぞっとするも、それは一瞬。男の骨張った手が胸に添わせられふにゅ、とやわく揉まれ、少女は己の出した声にますます羞恥に頬を染める。
制服の下にある白い双丘を想像するしかなかった今まではとは違い、目の前にはふるりとその姿が露になり、触れればやわい感触が手のひらに伝わる。自身のそれは、既に腹につきそうなほど反り勃っている。
「やっ、ぁ…!やめてください、熾月様…!」
「ああ…感度が良いのだな。実に愛らしい」
やわい感触を楽しむよう男はふにゅりと少女の胸を揉む。曲線をなぞるように手を滑らせ、そして。
「ひゃあんっ!」
「良い声をあげるな、撫子。…もっと聞かせてくれ」
男の指が少女の桜色の頂を掠めた時。意図せず甘い声を出してしまい、唇をぎゅっと噛む。それに気付いた男が無理矢理少女の唇に舌を侵入させ、先ほどと同じように舌を絡ませる。
「んっ……ふ、ぁ………」
素直に声を洩らす少女の口内を貪り、男は再び白い双丘を揉みしだきながら桜色の頂を摘み、指の腹で押しつぶし快楽を与えていく。
「やっ、ああっ…!ひうっ、ふ、ああっ…!」
華奢な身体が跳ね、甘い声をあげる少女に男は愛撫を続ける。そろそろ舌でも少女の柔らかなな胸を味わいたい。男は名残惜しそうにちゅ、と音を立てて唇を離す。
赤くなってしまった少女の白く細い手首を離し、男は側にあった手拭いで素早く拘束する。───そして、白い双丘の桜色の頂に舌を這わしていく。
「あっ!?きゃうっ、舐めちゃ、やあっ…!あぁんっ!あ、ああ───!」
指で与えられていた快楽とは違う電流のような痺れに少女は一際甘い声をあげ、華奢な身体がびくりと跳ねる。
柔らかな頬は朱に染まり、涙がつたい。長い艶やかな濡れ羽色の髪は乱れ、潤んでいる薄い紅色の瞳。
そのどれもが、男の劣情を煽る代物でしかなく。そしてそれが、他でもない自分が与えている愛撫によって愛しい少女が感じているのが男の情欲を刺激する。
は、と息を吐いた後、男は再び少女の桜色の頂に舌を這わす。味わうようにねっとりと口に含み、ちろちろと舐め上げる。
「や、ぁっ、あぁんっ…!んうっ、ひゃあんっ!あ、もう、やだぁ…!」
片方の胸は舌で味わい、もう片方は指で弄りやわい感触を楽しむ。ひたすら甘い声をあげる少女は、熱に浮かされたようにぼんやりと自身の身体の異変を感じる。
(…やっ、何だか、身体の奥、が…)
無意識に膝裏を擦り合わせようとすれば、少女のその様に男は口角を上げ、胸からつう、と手を下げていく。際どい位置まで捲れ上がっているスカートの中へ手を這わせ、太ももを撫で上げ。
「やっ、お願い、します…!そこ、は…!」
懇願も虚しくショーツを足首まで下げられ、今や少女の秘所を覆うものは何もなく。
「さて……そろそろ俺を受け入れる準備をせねばな、撫子」
「いやっ…!お願いします、やめてください、熾月様…!」
細い足を開かせ、未だ少女さえも触れたことさえない花園。その───なんと艶かしく、扇情的なことか。清楚で美しい花のような少女の、無垢の蕾。
「あっ、やっ…!いやぁっ、やだやだ、見ないでください…!やだぁ!」
「ああ…お前の此所も可憐だな。撫子、お前の愛らしい蜜口が俺を咥え込むと思うとそれだけで達してしまいそうだ」
胸を見られるよりも圧倒的な羞恥が少女を襲う。それは羞恥と呼ぶには生温く、絶望といったほうが正しい。いやいやと首を横に振り、薄い紅色の瞳の端を滲ませ、見ないでくださいと懇願するその姿は男を煽るだけだと、少女は知るよしもない。
───そして、ついに。触れられたことのない少女の無垢な蕾に、男の指が犯していく。
「…ほう、濡れておる。やはり感じていたのだな、撫子」
「やぁ、ちがっ、ひゃあんっ!」
蜜口を優しく擦れば、びくりと身体を震わせる。
無理やり犯されているのに、感じてしまったなんて。自分の淫らさに少女は唇を噛む。秘所に触れる男の指が気持ち悪くて、怖くて。つう、と涙がつたう。男の指が少女の秘所に無遠慮に侵入し、中で折り曲げたりしながら動かしていく。
「っや、あっ、いた、い…!」
二本目の指を入れたとき、小さく悲鳴があがる。やはり狭い。これで自分のそれが挿入できるだろうか。
少女の痛みを和らげ、気持ち良くなってもらうために男は指を動かし続ける。そして、ある一点をついたとき、少女は柳腰を跳ねさせる。
「ほう、ここか。気持ち良いか?撫子」
「んっ、やぁっ、いやぁ…!」
悲鳴ではない嬌声に男は口角を上げる。動かす度に跳ねる柳腰、甘い声。
早く、この中に自身のそれを埋めたい。だが、まだ駄目だ。もっとじっくり慣らして解さなければ、狭くてとてもではないが入らないだろう。何より、愛しい少女の痛みを和らげたい。
三本目の指をぬぷ、と差し入れる。あまり抵抗がなく侵入していったそれに男は口角をつり上げる。
ばらばらと指を動かせば、それに応えるように少女は甘い声をあげ、身体を震わせ、蜜を溢れさせ。
「ひうっ、や、あぁんっ、あ、ああっ!」
「俺の指で感じているのだな。は、愛い奴だ」
指でここまで乱れているのだから、自身のそれを蜜口に埋めたらこの可憐な美しい少女はどう乱れるのだろうか。ごくり、と男の喉が鳴る。
「───…さて、そろそろ頃合いであろう。これ以上は理性が効かぬ」
男の言葉に少女は恐怖と絶望で身体を震わせる。自身を拘束していた手拭いを外し、「痛かっただろう」と赤くなってしまった手首を男は優しく擦り、ちゅ、と口付ける。
「お願いします、熾月様……それだけは、それだけはやめてください……!何でもします、から…それだけはやめてください……!」
ぎゅう、と男の黒い着流しをすがるように震えながら握りしめる白魚のような白い指先。涙に濡れ、必死に懇願する少女の美しいかんばせ。自身を見上げる長い睫毛に覆われた薄い紅色の瞳。
「は、それでは劣情を煽るだけだぞ、撫子。───それに、」
「ひぁ、やんっ!ふ、あああっ…!」
ぐちゅり、と淫靡な水音。男の指が突然少女の蜜口をかき回し、とろりと溢れた出る蜜を指に絡め、少女に見せつける。
「こんなにも濡れ、蜜が溢れておる。…撫子。お前も俺が欲しいのではないか?」
わざと少女の耳元で低く囁く。少女が抗議の声をあげる前に、男は指に絡みついた愛液を舌で舐めとる。
───…その様の、なんと妖艶なことか。闇夜と同じ色の髪に、淡い金の瞳。男の髪色と同じ着流しを身に付けている姿は、端正な顔立ちをより一層際立たせ、どこか浮世離れをしている雰囲気を纏っている。
「…撫子。この熱はお前の中でしか鎮まらぬ。お前が欲しい」
睦言のように囁かれ、頬を撫でられ───硬く、熱く滾った男のそれを内腿に押し付けられ、少女は息を呑み。男のそれが自身を蹂躙するのだと考えるだけで恐怖に涙が零れる。
「や、だ…!いや、やだぁ!やだぁっ…!やめてください、熾月様…!」
「───…撫子」
柔らかな頬をつたう涙を舌で舐めとり、桜色の唇を塞ぐように口付ける。着流しの裾を割り、腹につきそうなほど滾ったそれを少女の蜜口に擦り付ける。
少女の蜜と自身のそれを何度も絡ませ、いよいよ───男を受け入れたことのない可憐な花園へと先端を進ませる。
「っん、うっ……!」
桜色の唇から吐息がもれる。解した甲斐があり痛みはまだ感じていないようだが───
「やっ、いや、やだぁ!いたっ、痛いっ……!」
まだ半分も入っていないが、やはり痛みを伴い少女の桜色の唇から悲鳴が零れる。少女の秘所は、自身の侵入を拒むようにひどく狭い。
「っ、力を抜け、撫子…。深呼吸をしろ」
「やだぁ、やだぁ!いたいです、も、やだぁ……!ぬいて、ください、熾月様ぁっ…!」
痛いと悲鳴をあげる少女に男は切なげに眉を寄せる。もっと解すべきだったと、男は内心舌打ちをする。欲望のまま奥深く突くことは簡単だが、幼子のように泣きじゃくる少女にこれ以上痛みを与えたくない。
だからといって、やめられない。愛しい少女が欲しいという欲は、止まるわけがない。
桜色の唇に口付け、無理やり舌を絡ませ、吸い上げる。甘い吐息が零れ落ちたのを確認し、男は徐々に腰を押し進ませる。
ちゅ、と音を立てて離し、少女の柳腰を掴んでいた片方の手は白い双丘へ。やわいそれにふにゅ、と指が沈み、まろやかな胸を揉みしだく。
「あっ、やぁっ…!」
痛みによる悲鳴ではなく、微かではあるが甘い声。そのまま胸への愛撫を続け、同時に徐々に───徐々に、少女の花園へと自身のそれを沈めていく。
「いっ、ひうっ、あ、なに、か───あ、ああ──…!おなか、くるしっ…!」
「痛みは和らいでいるようだな。…もう少しだ、撫子」
男は満足そうにふ、と淡い金の緩める。つう、と少女の内腿を流れる血が、やはり自身が最初の男だったのと改めて確認でき情欲が沸き立つ。そして何より、他の誰でもない自分が愛しい少女を"女"にするという甘美な優越感。
「…っは、全て入ったぞ。よく頑張ったな、撫子」
「え、あ───…あ、あああ!そん、な、あ、ああ───…」
視線を下げれば、女たる部分に男のそれが入っている。内腿をつたう、純潔の証であった血。…無垢で可憐な美しい少女は、無惨に男によって花を散らせてしまって。
「も、ゆるして、ください、熾月様……。おねがい、します……もう、これ以上は……」
…雨に濡れる、花のような美しさ。ぎゅう、と無意識に己の着流しを掴んでいるのが何ともいじらしい。
そっと、少女の桜色の唇に自身のそれを重ねる。そして、ゆっくり、ゆっくり───
「ぁっ……!」
男が腰を動かすと同時、旧き良き時代の名残を残した屋敷にぬぷ、と微かに響く淫靡な閨事の音。
「あっ、やぁ……!ふ、ああ…!」
「…ああ、良いぞ撫子。お前の中が俺に絡み付いて…っは、たまらぬな」
ぬぷ、ぐちゅり。少女の秘所が男に絡み付き、蠢く。脳が融けそうなほどの熱い快楽に、気を抜けばすぐにでも絶頂を迎えそうになる。
はぁっ…と吐き出された艶やかな吐息は、一体どちらのものだったか。
徐々に動きは早まっていく。少女の身体を線香花火のように控えめにぱち、と弾けるような甘い痺れから、それは大きく広がっていく。
「あっ、あぁんっ…!やぁっ、あ、ああ───…!」
艶めいた声が一層高くなる。ここまでくればもう痛みなど感じないだろう。男はぺろ、と口の端を舐める。ようやくだ。ようやく、愛しい少女を思う存分感じられる。
「愛いぞ、撫子。その甘い声をもっと俺に聞かせてくれ」
「ひうっ、あっ、ふぁっ、やんっ、ん、う───…!」
ぐちゅり、ぬぷ、ずちゅり。水音は大きくなっていく。それは行為の激しさを物語っており、男は少女の最奥を突き、激しく揺さぶる。
「ひぁっ、あ、あああ───!や、はげし、あ、あぁっ…!ひゃあんっ!」
「はっ、俺を離さんとばかりに締め付けておる。…愛い奴だ」
「やぁっ、ちが、も、いやぁっ…!ひうっ、あぁんっ!ふ、ああっ!や、熾月様ぁ…!」
蜜口から引き抜かれそうなほどそれが浅く引かれ───かと思えば、奥深く激しく突かれ。淫靡な水音は少女の聴覚さえも犯し、男に抱かれる初めての快楽に身体を仰け反らせる。
少女を犯している男も、着流しの乱れもそのままに律動を繰り返す。きゅうきゅうと自身を締め付ける愛しい少女のそれが、甘い声をあげながら自身の名を呼ぶ少女が。ひどく気持ちが良くて、愛しくて。女を抱いたのは無論初めてではないが、こんなにも満たされるのは後にも先にもこの花のような美しい少女しかいないだろう。
「っ愛しておる、撫子……!」
「やぁっ、や───!おかしく、なっちゃう…!は、ぁっ、あぁん!も、ゆるして、くださ───…!」
「存分に乱れろ、撫子。俺で感じている姿を、俺に見せてくれ」
清楚で純粋無垢な美しい少女が自身によがり、快楽に乱れるその姿。あまりにも扇情的で、男の熱は引くことはない。少女の秘所は一層男のそれを締め付ける。───そろそろ、限界が近いのだろう。
「いや、やぁっ、なにか、きちゃうっ…!やっ、こわ、い───…!熾月様ぁっ…!」
「は、達しそうか。案ずるな、そのまま俺が与える快楽に身を委ねればよい」
すがるように着流しをぎゅうっと握り、不安と恐怖にこちらを見上げる薄い紅色の瞳。少女を安心させるように、そっと口付けをする。
柳腰をぐっと掴み、更に激しく揺さぶれば、びくびくと少女の華奢な身体が震える。
「あ、やぁっ、きちゃ、う…!や、いやぁ!や、ああああ───…!」
「っく、う……!撫子……!」
一際高く上がった少女の嬌声。そして、身体の中に注ぎ込まれる熱い、男のどろりとしたそれ。
「え、あ……?こ、れ………」
まさか。───…まさか。行為の余韻で火照っている身体が急激に冷めていく感覚。つう、と太ももをつたう白濁色の液が気持ち悪い。
こぽり、と少女の蜜口から溢れ出るそれは、決して少女の愛液だけではなくて。
淡い金の瞳が恍惚に少女を映す。背筋が凍る、とはこのようなことを言うのだろう。少女を労るように、愛おしそうにそっと頬を撫でる。男の形の良い唇が紡ぐ言葉が、少女を絶望に陥れる。
「───…俺の子を孕むといいな、撫子」
熱を湛えた瞳で、低く囁かれた言葉。避妊具をつけずに少女の中に出された男の欲望が、蜜口からどろりと溢れ出る。
「や、いや……!あ、あああ───!そん、な…!あ、ああああ……!」
少女は悲痛な声を上げて泣きじゃくる。どうして───どうして、こんなこと。視界が涙でぼやけて、何も見えない。見たく、ない。
…夢だったら、どんなによかったか。いつも通り男と他愛ない話をして、一日を終えて。
───…ああ、そうだ、そうか、これは…。
(…ゆめ、なのかな……)
行為の疲労感と泣き疲れたせいか、徐々に瞼が落ちていく。とても、眠い。きっと、さっきのことはゆめなのだ。おきたら、いつもどおり。だって、いつも優しく自分を淡い金の瞳に映すあの人が、こんなひどいことするはずがない。
「…無理をさせたな、撫子。ゆっくり休むとよい」
「んう………熾月様……」
ほら、いまだって優しくわたしを淡い金の瞳に映して、頭を撫でてくれる。やっぱり、わるいいゆめだったのだ。ひどいゆめをみてしまって、ごめんなさい。
「………熾月様は、こんなひどいこと、するひとじゃないもの…………」
ふわふわ、雲に包まれているような感覚。信じていた男に裏切られ、無惨に花を散らされた少女は、ゆっくり───ゆっくり、意識を沈めていった。
* * *
すうすうと、穏やかに眠っている少女。ぎゅうっと子供のように自身の着流しを握る姿がとてもいじらしく、愛おしい。
「───…撫子」
涙の跡を残す少女の柔らかな頬を撫で、ちゅ、と桜色の唇に口付けし、自身が犯した少女を淡い金の瞳に映す。首筋には咲かせた紅い華。制服は乱れ、少女が呼吸をする度、露になったままの白い双丘が誘うようにふるりと揺れる。───…そして、少女の太ももをつたう、純潔の証であった血と、自身の欲望である白濁色の液。交ざり合うそれはひどく扇情的で、再び熱が集まる。
「───…愛しておる、撫子。お前を俺以外の男が触れるなど、決して許せるものか」
たおやかで、純粋無垢な自分だけの美しい花。
少女の身体を拭いてやらなければならないと、名残惜しいが着流しを掴んでいる小さな手をそっと離す。箪笥から持ってきたタオルで顔や身体を拭いていれば、少女は小さく身動ぎをする。
『………熾月様は、こんなひどいこと、するひとじゃないもの…………』
ふいに思い出す、眠りの揺りかごへ揺られながら少女が虚ろながら紡いだ言葉。
「…俺はお前が思っているような男ではないぞ、撫子」
欲望のまま少女を貪り、嫌だ、やめてほしいと泣き叫ぶ少女を無視して花を散らせた。あの花のような可憐な笑みは、二度と己に向けてはくれまい。
…それでも。それでも、何を代償にしてでも、少女が欲しかったのだ。
縁側から外を見やれば、夜の帳が落ちようとしている。男と少女の間を、夏にしては涼やかな風が吹き抜けていく。
───…ひぐらしが鳴いている。それはまるで、純粋無垢で穢れを知らない美しい少女を欲望のままに穢した自分を責め立てているようで。
……男は、淡い金の瞳を静かに伏せる。カナカナカナ、とひぐらしが鳴く声は、いつまでたっても止むことはなかった。
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