一人の時、聞こえる囁き

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 アイツは大きなステージで、着実に力を付けてステップアップしてたんだ。  ファンや仲間たちから寄せられるたくさんの言葉の中から真に役立つ意見を見極め、(みずか)らの血肉(けつにく)としたんだよ。  それらの言葉を積極的に取り入れる事によって。  お前がぬるま湯のような小さなステージで、どんぐりたちと楽しく背比べしてる間にな。  どんぐりの背比べなら、 ――ちょっと頑張れば追い越せるかも――  って望みもあるけど、アイツの実力とお前たちの実力とには、雲泥の差があるもんな。  今じゃすっかり水を開けられて、どうあがいたって追い越すどころか追い付くこともできない。  だからもう今さら、 ――頑張ろう―― ――努力しよう――  っていう気にもなれないんだろ?  うんうん、そうだな。  負け(いくさ)なんかしたくないもんな。だって、確実に負けるし。  でも悔しいから、負けなんか認めたくないし。  アイツの引き立て役なんて、真っ平ごめんだよな?  そうだよ、頑張ったって無駄無駄! 努力するだけ時間と労力の無駄なんだよ。
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