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1
青年時代にとても好きな人がいた。世界中にたった一人の心を許せるかけがえのない女性だと思っていた。
彼女の名はレイ子。うりざね顔の涼やかな美貌に長い豊かな黒髪そしてすらりとした体躯の持主だ。彼女の指先はまるで鈴蘭の花が咲いたような甘酸っぱい情緒に満ち溢れ、そのまばゆいほどの生気を放つ脚の悩ましく官能的な風情はどんな神々や天使達をも一瞬で地上に墜落させるほどだ。
若い私はたちまち彼女への恋に落ち、熱烈に呼びかけては逢瀬を重ねた。
彼女とともに飲むお茶ははちみつの味がし、彼女とともに観る特撮映画は素晴らしい名画の香りがした。それは私の半生の中でも輝く宝石のような日々だった。
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