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私の心は突然糸の切れた凧となった。
その日も私はいつも通りに出勤するつもりで家を出た。通勤路の半ばまでは普段通りにルーチン化された行動を取っていた。が、不意に心の中に冷たい隙間風とともにセイレーンの誘惑のようなある考えが舞い込み、ぐるぐると巡り始めたのだ。
──今この時この瞬間はまさに一度きりのこの瞬間なのである。それなのになぜこんな辛い思いに堪えてまでしたくもない仕事を義務的に勤める必要があるのだろうか。オレは別に好きでやってんじゃないんだ。オレは別に行きたくなんかないのだ。行かなくったっていいじゃないか。別にもういいじゃないか──。
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