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私は目を覚ました。胸が高鳴っている。恐ろしい夢だった。こんな恐ろしい幻想を見たのは生まれて初めてだ。しかし、私にとっては目を開けて見る現実も今は地獄に等しいのだ。レイ子のことを想うとたまらなく胸が痛くなる。やはり未練が心の中で渦を巻いているのだ。自尊心の高い私は何度もレイ子に対して言い寄る気などない。だが、満たされぬ熱情のようなものだけがあてどもなく私の躰の中を駆け回っているようだ。世の中にこんな辛いことがあるなんて私は想像したこともなかった。ああ、胸が痛い、睡眠薬などを嚥んでもうずっと眠っていたい、と私は思った。それでも職場に出勤しなければならないとはなんと残酷なことなのだろう。私はどこまで耐えられるのだろうか。私は僅かに残された義務感のようなものに突き動かされて、ふらふらと起き上がっていた。
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