プロジェクト・オリジン

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スコルピアの科学力を持ってしても、寿命を伸ばすことはできなかった。 昴達の世界での、平均寿命は30歳だ。 中には、まれに50歳程度まで生きられる人もいるが、そんな人は、極僅(ごくわず)かで、大概の人は30歳から40歳くらいで死んでしまう。 病気などではない。 身体の機能が徐々に低下して、動きを止める。 言わば、老衰なのだ。 これを改善するためには、一つの可能性に賭けるしかない、が、研究を続けた学者たちの結論だ。 それが、『新たなDNAを取り入れる』こと。 スコルピアから、地球までは、約45光年離れている、と言われている。 それは光の速さで45年だ。 実際の宇宙船では、そんな速さで飛ぶことは出来なくて、恐らくは、到着するだけで100年かかると言われていた。 穏やかな、スコルピアの人達は、開拓精神をさほど持ち合わせていない。 そのため、他の星に行くための宇宙船なども当然ながら、なかった。 けれど、そんなことは言っていられない、と提唱されたのが半世紀ほども前。 今は、どうなっているか分からない地球。 そこに人員を送り込み、DNAを交配した上で、どんな形でもいいから、それを持ち帰る、というプロジェクトがスタートしたのだった。 もしも、帰ることが不可能であったとしても、そこに永住できるようなら、そこで永住しても構わない。 生きた証さえあれば。 そんな気持ちが、あったかも知れない。 『プロジェクト・オリジン』と名付けられたそれは、宇宙船を作成するところから始まり、ありとあらゆるリスクを計算し、人員を選抜し、スコルピアの人達の希望を乗せて、旅立ったのだ。 昴は、そのメンバーの中の1人だった。
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