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ホログラム
それから、数日が経っても、パートナーの真珠は目覚める気配を見せなかった。
昴は研究者ではあるものの、コールドスリープについては、仕組みしか分からず、どうすることも出来ない。
「衣舞、真珠はなぜ、目を覚まさない?」
『…分かりません、昴さん…。』
何にでも即答するはずの人工知能が、戸惑うのか?
昴は目覚めたら、真珠の顔を見に行くのが習慣になった。
「おはよう、真珠。昨日はね、農園に花が咲いていたよ。そう、あとは観測室で星を見ていた。このノアから一歩だって、外に出たら、空気さえ、引力さえないのに、星がたくさん浮かんでいてね、とても綺麗だったんだ。…早く、君と見たいよ…。」
降るような星空の中、旅をしていたって、君と一緒なら寂しくないのに…。
『昴さん、お食事が出来ています。』
「…ん…分かった…。」
昴はダイニングに向かい、食事を始めた。
『昴…さん…』
ダイニングの入口に居たのは、白い衣装に、プラチナブロンド、グレイの瞳の美しい少女。
「だ…れ?真珠…ではないよね?」
彼女はこくり、と頷く。
『衣舞です。』
「衣舞?!君、そんな姿!!」
そういえば、タブレットの中の女性と少し似ているかもしれない。
それでも、今の彼女の方が、やや若い気がする。
そう、真珠と同じくらいの年齢のようだ。
駆け寄って、肩に触れようとすると、彼女は身を引いた。
『立体映像なんです。』
「ホログラム…」
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