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突然の命令
「久しぶりだな、七瀬」
「ご無沙汰しております」
8年ぶりに再会した親子の会話とは思えない程冷めているけど、そんなことはどうでもいい。
何事もないように振る舞っているけど、内心私は混乱していた。どうしてこの場所に呼ばれたのか、全く見当が付かないからだ。この場所は実家だけど、もう随分と訪れていなかった。
一度冷静になるために深呼吸をする。そして、ここに来ることになった経緯を考えるのだった。
私、新海七瀬は、高校を卒業した翌日、アメリカに渡った。アメリカの大学の入学は秋からだったけど、少しでも早く向こうの生活に慣れておきたかったし、何より日本にいたくなかったから。
日本にいたくなかった理由はただ一つ。父親が嫌いだったから。母親とも仲良くはないし、実家に私の居場所はない。ずっと家を出たかったけど、高校生の私にはそれが許されず、やっと制服を脱ぐことが出来たのだ。
それでも、日本を離れる理由はないのでは?と言われるかもしれないけど、私は早く自立したかった。日本にいる限り、いつ父親が干渉してくるかわからない。そんな環境になんていたくない。
だから私は、それまでコツコツ貯めてきたお小遣いやお年玉と、高校生の時に必死に集めたバイト代で留学を決意し、家族には留学することを直前まで隠して、高校卒業後すぐに渡米した。
アメリカに渡って、私はやっと自由になれた気がした。
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