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「で、ですね。くる途中でまたリサーチしておきました」
ハルさんがパフェをぱくついてるタケマロに紙ナフキンを渡しながら言う。
「リサーチって?」
「昨晩ハヤト……冬馬と連絡した子がいまして、DMで話を聞きました」
「昨晩!?」
「おそらく、タケマロさんと別れた後だと思います。時間帯がちょうど真夜中くらいだったそうなので。冬馬、すごく慌てた口調で、まとまった金がいる、海外に逃げる、って言ってたらしいです。で、タケマロさんに確認です」
ハルさんはちらりとタケマロに目をやった。タケマロはパフェをほとんど食べ終わっている。これなら、ちゃんと話を聞いてくれるだろう。
「昨晩の冬馬の様子、変わったところありませんでしたか」
「変わったところ?」
「はい、たとえば、電話かメールがあった後に急に慌てたとか怒りだしたとか怯えた、とか」
タケマロは思い出すように目をぎょろり、と回してみせた。
「昨日口論してたときに、電話かかってきたんだよね。話しながらどんどん焦りだしてさ、ヤベェヤベェって言いながら逃げようとするから、掴み掛かったんだよね。そしたら避けられて、アタシ怪我したんだけどさ。絶対逃したくないと思ったから足に縋ったの。でも足蹴にされて逃げられちゃった」
「それ、何時くらいだったか覚えてますか」
「うーん、日付は変わってなかったと思うけど……なんで?」
「やっぱりね」
ハルさんは手のひらに収まるくらいの小さなノートを取り出すと、何やらメモをし始めた。
「あくまでも憶測で、確定じゃないです」
「うん」
「冬馬、半グレと暴力団のいざこざに関係してるかもしれないです」
「え……」
「前に言いましたよね、歌舞伎町の方でいざこざがある、って」
あ、と思い出した。そういえば、そんなことを言っていた記憶がある。
「冬馬、スカウトをやってたこともあるみたいだし、もしかしたら暴力団絡みの女に貢がせたとか、スカウトで向こうが囲ってる女に手を出したとか、考えられると思います」
「ってことは?」
「どちらか、あるいは両方に追われてるんじゃないでしょうか。だから急に、海外行くから金出せって言ったりしたのかなって」
「でも、そうなるとわたしたちの手に負えないよね」
「そうなんですよ」
ハルさんはアイスココアをじゅっ、と吸った。
「こういう業界に多少でも顔が効く人、いないですかね」
わたしとタケマロは顔を見合わせた。わたしは基本学生だから当然そっち方面の知り合いはいない。
「アタシ暴力団とは関わりないわよ、半グレも」
タケマロもブンブンと首を振った。事情は掴めても八方塞がりか……。
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