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ハルさんが来るまでの間、タケマロにはベッドを使ってもらうことにした。きっと、あまり眠れてなかったんだろう。布団に入るとタケマロはまもなく高いびきをかきはじめた。
その音を聞きながら、大学の復学申請書類を取り出す。そろそろ復学しないと親に申し訳ない。
大学には同じバレエ研究所に所属していた真由(まゆ)がいる。あんなことがあるまでは、よく一緒に授業受けてからレッスンに行ったり、バレエの悩みや勉強のことを相談していた。親友だと思ってた。思ってた、けど……。
真由は変わらずにバレエを続けているだろうか。近況を知りたくないからSNSは見ていない。わたしのことをどう思っての、あの言動だったのか。なんとなく想像がつくから逃げるように去った。
周りの視線が怖くなり、大学に行けなくなって休学した。真由はその原因が、自身の不用意な言葉のせいだなんてきっと、思いつきもしないのだろう。
人と関わることが怖くなったわたしを、バーレスクが、美香子ママが拾ってくれた。
おかげで立ち直れたし、休学を選んだ自分を肯定できたのも大きかった。
まだあのときの、彼女の不用意な発言でついた心の傷は疼くけれども、その痛みが少しずつ、小さくなっているのは確かだ。
就職のこともあるし、やらなきゃいけないことから目を逸らしてきた分、向き合わなきゃいけない。もう、逃げるのはやめたいから。
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