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ハルさんから「駅に着いた」と連絡がきた。タケマロを起こして急いで支度をさせ、駅前のファミレスで落ち合う。
「ねね、ハンバーグセット食べていい? 後、季節のパフェ」
「タケマロ、あんたお金持ってんの」
「貸してよ、ショーコ」
「なんでわたしが貸さなきゃいけないのよ」
「だって財布ん中、千円しかないもん」
「千円内で食べられるものにしなよ」
「そしたら帰りの交通費なくなっちゃう」
不貞腐れた顔をして見せるタケマロに、思わず笑いそうになりながらもハルさんを見ると、ハルさんはスイーツのページを真剣に見ている。
「ハルさん、決まりました?」
「いえ……どれも美味しそうで目移りしちゃって」
「季節のパフェにしなよ、そんで一口ちょーだい」
「タケマロさんはお好きなの頼んでください、奢ります」
「マジで!? あんた意外といい子じゃん!」
「ハルさん、奢る理由ないですよ」
「いいえ、ハヤトに目に物見せる機会くださったんですから。それに、貢ぎすぎてお金がないときの気持ちは私もわかりますし」
ハルさんはニコニコしながら、「じゃあハンバーグセットでいいですか? 季節のパフェ、小さいのもありますよ。飲み物どうします?」と、こまめにタケマロの世話を焼いている。その姿にちょっとだけ「面白くない」と感じている自分がいた。
「ショーコさんは決まりました?」と聞かれ、はっと我に返る。
「あ……、えっと、ドリンクバーにしようかな」
「じゃあ注文しちゃいますね」
ハルさんは手慣れた様子で手元のタブレットに入力していく。そうか。そうだよね。普段は忘れがちだけど、ハルさんは社会人で、わたしよりも四歳上で、しっかりしてる人なんだ。
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