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ハルさんはわたしが聞きたいことを察してくれた。そして「こくん」とホットティーを飲むと、にっこりと微笑んだ。
「私はショーコさんが大好きです。ショーコさんが女の子を好きでも全然構いません」
「え、と。でも、その」
「もしもショーコさんが私のことを恋愛対象として好きなら、それはそれで嬉しいです。でも、だからといって、私がショーコさんを同じように恋愛対象として見るかっていったら、そういうことでもないんですけど。好意を向けられること自体は嬉しいです」
「ハル、さん」
「私、ショーコさんに救われました。バーレスクにも救われました。ショーコさんのダンスの演奏ができるっていうだけでもありがたかったのに、私に…思い出させてくれました」
「思い、ださせた?」
「はい」
ハルさんの目が優しい。その眼差しに見られていることに、今にも泣きそうだ。
「ピアノを弾くこと、歌を歌うこと……やっぱり大好きなんだ、って思いました。ハヤトのこととか日本の芸能界のシステムとかで、もう音楽に対する情熱なくしたかと思ってたんですけど、ショーコさんが私に、自分らしく息をする場所を作ってくれましたから。
ありのままのショーコさんを受け入れない場所もあると思います。真由さんみたいに受け入れられない人も。でも、私やXX(ダブルクロス)のみなさんは、ショーコさんを、そのままでちゃんと受け入れてると思います」
「ハルさん」
「だから、踊ってほしいと思います。ショーコさんが踊りたい、って思う限り。ショーコさんが踊りたくて、私のピアノと歌が必要ならいつでもやります。ショーコさんが素敵に踊る姿を、あんな間近で見られるなんて、ファン冥利に尽きますし」
「ハルさん……ありがとうございます」
言葉にならなかった。胸の中に感謝と安心が溢れる。わたし、自分を偽らなくていいんだ。自分の気持ちに嘘を吐かなくていいんだ。わたし、わたしで……いいんだ。
自分でいられる、という安心感。誰かに対して偽らなくていい、このままでいい、という受容された感覚。いろんな意味で私も、バーレスクに、XX(ダブルクロス)に、救われてる。
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