序章

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序章

 日本のあるところに、一人の不幸な少年がいた。  少年は裕福な家に生まれたが、体が弱く不治の病によって二十代のうちにその儚い命を失ってしまう。  人生の半分以上を病室で過ごした彼の唯一の楽しみは読書だった。  小説を始め、政治、経済、歴史、金融と様々な分野に興味を持ち、その命尽きるまであらゆる知識の習得に没頭したのだ。  死の間際、せっかく得た知識を活かす機会がないことを、少年が残念がるのも無理はない。  そんな無念が天に届いたのか、彼は異世界に転生していた。  そこそこの国土を持ち、商業の発展した帝国『エデン』の第三王子として。  名は、ランダー・プリステン。  残念なことに優秀な兄、ロード・プリステンとエンペイラ・プリステンがいるため、次期国王の座は望めない。  しかしそれでも、ランダーは構わなかった。  彼は前世で得た知識を使って、今生(こんじょう)の生活を大いに楽しんだ。
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