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「イチャイチャなんてしてませんよ。頼まれてた資料を渡してただけです。」
「ふうん、頼まれてた資料、渡してネクタイ曲がってるのを直してあげただけなんだぁ。そっか、そっか。」
「うっ…」
これはもしや、嫉妬ってやつですか?
課長が私に嫉妬だなんて…
そんな日が来るなんて…
ちょっと照れる…
と、同時に…
面倒臭くもある。
「課長、職場ではこういうの無しっていったじゃないですか。」
ごく一部の人にしか私達が付き合っていることを話していない。
つまりは椛島さんと飯山くんくらい。
そう、椛島さんにもちゃんと伝えた。
私の口から伝えた。
課長も一緒に伝えるって言ってくれたけど、
背中を押してくれたんだもん。
ちゃんと私から椛島さんに伝えることで本当の区切りをつけたかった。
私が今度こそ課長とちゃんとお付き合いする事になりましたって伝えたら、
「よかった。箕輪さんの口から聞けて。住吉から聞いてたらまた腹に一発ーーーって冗談。ありがとね、僕の恋をちゃんと終わらせてくれて。」
そう言って、笑った顔はどこか寂しげで…けれど、同時にホッとしているようにも見えた。
そんな事もあり、私達が付き合っていると言う事実を知っている人が例え二人でも社内にいる以上、ケジメは付けたい。
だからこそ、節度ある態度でビシッと線引きはしたいものだ。
「俺もーーーーーかった。」
なにやらブツブツ言ってる?
「どうしました?」
「俺も、ネクタイ曲がってるとかって直してほしい。」
「箕輪さん、その視線って恋人からの視線で合ってるかな?」
「す、すいません…つい、引いちゃって…」
「ああ、引いちゃった。へぇ、それは仕方ないね。じゃ、まぁ、取り敢えず、立川のおっさんの話だけどーーー」
さすがに少し落ち込んだかな?
仕方ない。近頃、考えるようになってたこと言ってみようかな。
「課長。」
仕事の話を進めようとする課長の話を強引に遮る。
「ん?」
「週末…」
「ああ、週末ね。姉貴には連絡してあるよ。そうそう、昼飯用意しておくって張り切ってたわ。」
週末、課長のお姉さんのお家にお邪魔することになっている。
結局、あの日以来、まともにご挨拶も出来ていなくて気になっていた。
そして、お姉さんの旦那さんも奥さんへの愛が猫嫌いを見事、克服して、無事にミィちゃんはお姉さんのお家に家族として迎えられたのだ。
つまり6階のミィちゃん部屋はない。
「ええ、そうなんですけど、その日、あの、えっと、なんと言いますか。」
駄目だ…
言える気がしない…
もっと触れてほしい…とか。
こういう時、世論はなんていうの?
はぁ、もっとデータを取っておくべきだった。
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