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本来、私がデパートに就職を決めたのは単に女性が多い職場だから。
あまり、男性と接する機会が無いと単純に思ったのだ。
今、振り返っても若さゆえの浅はかな考えだったと思う。
しかも最終的に配属された先はここ外商部で、圧倒的多数男性の職場だ。
入社初めこそ販売員として店頭に立っていたけれど表情に乏しい私は売り場で笑顔を上手く振り撒く事が出来ずに、そのせいでお客様ともトラブルがあったりした。
サービスクレームをいくつか出しながらも私なりに頑張った。笑顔の接客を心掛けた。
けれど…
結局、自ら事務職へ希望を出し、結果ここ、外商部へ配属されたのだ。
自席に着きパソコンをオンにする。
課内はまだ誰も出社していない。
パソコンが立ち上がるまで椅子に座ったまま少しストレッチをする。
腕を伸ばし背中を椅子の背もたれに完全に預けるとーーーー
「昨日はどうも。」
と、私の頭の真上から住吉課長が声を掛けてきた。
ガタンッと音を立てて直ぐに体制を整える。
そして、ちゃんと課長の方へ向き直り「おはようございます。」と言った。
課長は何事も無かったかのように自分のデスクに着くと
「おはよう。今日も早いね箕輪さんは。」
こちらに顔を向けることも無く言った。
何だか、自分ばかりがテンパってるのを認めたくなくて極力何事も無かったかのように漸く起動したパソコンに向き直った。
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