星降る夜に

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 でもこの六年、一度として遥がやって来ることはなかった。当然だろう。あの夜を特別なものとして覚えているのは僕だけであって、もう彼女自身は忘れているかもしれない。  もし彼女が立派な天文学者に仲間入りしているとすれば、『月の村天文台』なんかとは比べ物にならない立派な天文台で、僕には想像もつかないような宇宙の星々を見上げているのかもしれないのだから。  麓までニ十分ほど走らせ、車は駅に着いた。  駅前には電話で聞いていた情報と合致する二人組の姿があった。講師の男性と、付き添いのピクセンの女性スタッフ。どうやらお待たせしてしまったようだ。 「遅れて申し訳ありません。『月の村天文台』の朝日昴といいます」 「こちらこそわざわざ迎えに来ていただいてありがとうございます。ピクセンの依田です」  その声に聞き覚えがある気がして、僕は名刺から顔を上げて相手の顔を見た。相手の女性もまた、ポカンとした表情で僕を見つめていた。  差し出された名刺にもう一度視線を落とす。  株式会社ピクセン 営業企画部の下に、依田遥の文字。 「遥さんって……もしかして」 「昴くん……あの時の」  彼女が僕を覚えていてくれた事に、感動すら覚える。そうか。星を学びたいと言っていた彼女は、研究者ではなくメーカーへの道を選んだのか。  今晩の〈スターウォッチング〉は、どうなるだろうか。  二人を乗せた車を走らせ、雲一つない青空を見上げながら僕は思いを馳せる。  きっと良い夜になるに違いない。僕たちが出会ったあの時と同じように。  星降る夜に。
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