星降る夜に

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 陽が沈み、どんどん寒さが厳しくなる。みんなダウンジャケットの上から毛布やブランケットを羽織り、白い息を吐きながら空がもっともっと暗くなるのを待った。  天文台の入り口のところには焚火が燃えていたけれど、星の鑑賞の邪魔になるからと個々が勝手に火を焚くことは出来なかった。六時ぐらいに持参したカップラーメンを食べた後は、ただただ寒さに震えながらひたすらに待つばかりだった。父は知人と楽しそうに話していたけれど、僕はどうして自分がここにいるのか、なぜ行くなんて言ってしまったのか後悔しかなかった。  彼女を見つけたのは、あんまりにも手持無沙汰だからと天文台の自販機で缶ジュースでも買って来ようと出掛けた時だった。観察の邪魔にならないようにとほとんどの照明を落とされ、ゆらゆらと焚き火の赤い炎に照らされたほの暗い天文台入り口の段差に、彼女はブランケットにくるまって丸まるようにして座っていた。おじさんしかいない中で、女性でしかも若い彼女は目を惹いた。
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