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彼女もまた一人で暇を持て余していたのだろう。自分とほぼ同年代の僕を見つけて、驚いたように大きく目を見開いた。
「こんばんは」
声を掛けてきたのは彼女の方からだった。
「あなたも星を見に来たの?」
「ええと……うん、まぁ」
彼女の質問があまりにも的外れで、加えて両親や先生以外から話しかけられるなんて久しぶりだったこともあり、つい口が重くなる。我ながらはっきりしない返答に、彼女はくすくすと笑った。
僕の反応を見て、どうやらそうではないと悟ったらしい。
「なんだ。星が好きなのかと思った。残念」
「……は星を見に来たの?」
あなた、ともきみ、とも言えず、名前も知らない相手をどう呼んだら良いかわからなくて、僕はもごもごとぼかして聞いた。
「そう。ふたご座流星群が見れるって聞いて、お父さんに連れてきて貰ったの。でも、知らない人ばかりで」
「お父さんは?」
「多分あっちの方で誰かと喋ってる」
「同じだ」
似たものを感じて、僕たちは微笑み合った。
そのまま僕たちが二人で話し込んだのは、自然な成り行きだっただろう。何しろあの時あの場所には、大人以外の中学生は僕たちしかいなかったのだから。
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