星降る夜に

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 そうしているうちに、レジャーシートが並べられたイベント会場で、大人たちのさざめくような声が聞こえてきた。 「そろそろ時間かも」  彼女に促されるように立ち上がり、会場へと戻ろうとする。  焚火から離れるにつれて、闇がより深くなっているのを感じた。時間が遅くなり、麓の町からの明かりがどんどん消えていくのだろう。夜空はより暗く、黒く闇を深めていた。  反比例するように、沢山の星が姿を現す。焚火の明かりに照らされていた目が、闇に慣れれば慣れる程、闇の奥から浮かび上がるように小さな星々がどんどんどんどん溢れ出してきた。 「あっ」  誰かの小さな悲鳴が聞こえ、人々がどこかを指差す。また別のところでも声が上がり、空に向けられた手が違う方向を示す。 「ねえ、見た?」 「うん。今、こっちにも」  興奮した声で呼びかける遥に応え、僕も今見た星の軌跡を指し示す。  星が、降っていた。  初めて見る流れ星が、一つ、また一つと、視界の隅でチカチカと輝き、燃えるように消えていく。 「ふたご座流星群だ……」  呟くように言い、うっとりとした表情で夜空を見上げる遥に、僕の胸はぐっと押されたような痛みを感じた。  そのまま僕は、次々と星が降る夜空と遥の横顔をいつまでも見つめていた。
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