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「助けてください。背中に爆弾がついているんです」
シキがサイドカーから降りて近づくと、荒野にポツンといた男は開口一番にそう言った。
ユウリは少し離れてバイクに跨りいつでも拳銃を抜けるように構えている。
男は中年で、男性としては少し背の低いシキよりもさらに小さく、お腹が出ている。
「爆弾?」
シキが表情を変えずに訊く。
「は、はい。あ、待って。行かないでください。爆発はまだ大丈夫、なんですが、でもあと五分。……あと五分で爆発するらしいんです。スイッチを押せば簡単に作動しなくなります。ただ、手が届かないんです」
男はじたばたと背中に手を伸ばすが、太った体に短い手では届かない。
「シキ、無視して行こう。危険だ」
ユウリが運転席から冷たい温度で言った。
「そんな! 助けてください。お礼ならたくさんできます。財産があるんです。どうかお願いします」
「それは魅力的な提案だな。まあちょっと待てよ、ユウリ。――なあおっさん。後ろ向いてみな」
男は体を半転させた。
ユウリの位置からはシキが邪魔になって男の背中はよく見えない。が、電子音が聞こえてきた。カウントダウンの音だろう、とユウリは判断する。
「ははーん。なるほどね」
「シキ、もう行こう」
ユウリの抗議を無視して、シキが言葉を続ける。
「おっさん。助けてやる。だが、あんたがこんな羽目になった理由と財産の在りかを先に言ってくれ。一分以内に、正直にな」
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