『山田くん』

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 宿題をしていると階下からお母さんが呼んだ。そういえば今日はまだおやつを食べていない。 「春乃、遅くなっちゃったけど、プリン、宿題は終わったの?」 「それ、『山田くん』にも言われた」  春乃はそう言って誤魔化すように笑う。 「漢字のテスト、前回は70点だったんだから、今度は100点を取ってね、でないと人形はお母さんが預かっちゃうよ」  それは嫌だと思って春乃はブンブンと頭を振る。『山田』くんを取られたら死んじゃいたいくらいだ。 「勉強、頑張る。でも、漢字って難しくて苦手」 「そう、どうしたらいいんだろうね」  お母さんは一緒に考えてくれるがいい考えは浮かばない。  プリンを食べて自室に戻る。クッションにもたれていたはずの『山田くん』が勉強机の上に乗っていた。  そして『山田くん』は突然饒舌に喋りだす。春乃は最初耳を疑った。 「春乃ちゃん、漢字を覚えるの不得意なんだね」 「えっ?」  春乃は目を見開く。
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