アキコ

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アキコ

テレビや漫画で、怖い話を聞く度に。 『なんで夜、心霊スポット行くんだろう』って不思議だった。 真っ暗な中でさ迷えば、どこもかしこも怖いに決まっている。 「また見てるの?」 親友のエリコに声をかけた。 パソコンで動画を見る、その背中に。 「ん。ここ、超ヤバイみたいでさぁ」 暑いから、と服を寛げてあぐらをかいた彼女は振り返った。 興奮してるのはよく分かる。動画に映る数人の男たちと同じ空元気のテンションだ。 「ホント好きだね」 私、アキコが呆れるのも無理はないだろう。 親友の家に遊びに来てるのに、この子ったらずっとこの調子だ。 ……心霊オカルトマニア。特に夏になると、エリコはこの手の動画やサイトをあさりだす。 「でもさ。こういうのってワクワクしない?」 「しない」 「えー? ったくぅ。アキコはロマンがないなぁ」 ロマン。 単なる好奇心だろう。むしろ猫を殺すタイプの。 ――私は大きく息をついて、汗をかいてるガラスコップに麦茶をつぎたした。 「はいはい。ほどほどにしときなよ。祟られても知らないんだから」 「そんなこと、あるわけないじゃん」 動画が終わったのだろう。 チャンネル登録やらをしきりに促す、耳障りな男の声がする。 あぁ、こういうのも苦手。私は思い切り顔を(しか)めていたと思う。 「もしかしてアキコ、本当に幽霊とかいると思っちゃうタイプぅ?」 「え」 思いもかけない返答に、課題を広げる手が止まる。 ……私達は学生で、今日は課題をこなす為にこうしているのだ。 「ファンタジーやメルヘンじゃないのよ。幽霊や呪いなんて、あるわけないじゃない」 「じゃあなんで」 オカルトマニアが言っていい事なんだろうか。 私の表情に、彼女が困ったように首を傾げた。
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