エリコ

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「まずは玄関」 うちの実家より玄関からして広い。 そして当然、靴はない。靴箱も全部開いている。 既に探索し尽くされた感があるのに、少しガッカリしたけど仕方ない。 ここだって、割と有名な心霊スポットだもんね。 「お邪魔しまぁす」 あえて呑気そうに言ってみる。 ここで恐る恐る、とか。さすがにあざとすぎからね。 さらに靴箱の上に手を置いた瞬間、硬い声が響いた。 「エリコ……!」 後ろに居たアキコの声。 カサリ、とした感触。 「なにか、置いてある」 「ホントだ」 折り紙、だろうか。 よくよく見ればそれは。 「鶴、だね。折り鶴」 アキコが言った。 千代紙で折られている、見慣れた形。 「これって」 「この家の子供、かな」 早くも語尾が震える彼女の声に、かぶせるように答えた。 ――いいね、すごくいい。これこそ心霊スポット巡りって感じ。 あたしは、恐怖心がない。 昔からお化けとか幽霊とか。そういうモノの何が怖いのか分からない。 でもそのお祭り騒ぎ的なノリは好きだし、暗闇を探索する冒険は素直に楽しいのよね。 でもやっぱり、そこにみんなの反応が加わると格別っていうかね。 ……私はスマホを眺めそっと笑う。 リアルタイムで反応がくる。 賞賛や恐れ慄くコメント欄。事件についての記事を引っ張りだしてくる演出付き。 やっぱりオカルトマニアはやめられない、と思う。 「行こ」 「う、うん」 最初の余裕はどこへやら、後ろにくっつくようについてくるアキコに笑えてきた。
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