一章

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 真理子ちゃん、と呼ばれたのは、少しギャル系の入った小柄な女の子。 相田真理子さん。  その彼女に作業の仕方を教えているらしい、大柄ないかにもスポーツマンといった男子は、一色洋平くんという。  彼らの隣で話しかけているチャラそう、もとい少し派手な外見の彼は、薬師寺大地くん。 ロックバンドをやっている、という自己紹介にさもありなんという金髪にド派手な黒い革系のファッションが目立つ。  金髪なんて、普段は見慣れているつもりなんだけど……。  ――第二次世界大戦後。  敗戦国となった日本では、連合国による分割統治が行われた。 それまではアジア系の外見をした人種が、ほぼ全国民を占めていたが。  流入した欧州の人々はその後も定住したり元々の国民と結婚したりで、現在の日本はミックス化が進んでいる。  今は、国民の半数ほどがミックスもしくは移民だ。 だから地毛が金髪なんてのも別段珍しくないし、ファッションで染めている人もかなり多い。  だけど似合わない人っているんだよなあ。  薬師寺くんの場合、派手な見た目に気さくな感じの話し方で、そのギャップが何だか好ましいけれど。  ロックだぜ、というのが口癖のようだった。 「これ……ここ?」  ぼそ、と訊ねられて振り返る。 荷物を抱えて立っている長身の男子がいた。  今泉勇羽くん。 よく、黙って立ってればイケメンなのにって言われる人を見るけど。 今泉くんは、黙ってるイケメンだ。  無口で、自己紹介の時と今で何か喋ってるのを聞いたのは二度目くらいじゃないかな。  そこに僕――杉崎亮太郎を加えて、男四人女二人の総勢、六人。  これがこの奇妙な集まりの、メンバーだ。 全員が、今日初めて会った初対面。 けれど偶然にも、全員が同い年の二十歳。  僕たちは、ある目的の為にここに集まった。  山の中腹にある、廃合宿所。  山の斜面に沿って敷地が広がっており、なだらかな斜面を階段状に均す感じで施設が点在している。  一番下が駐車場で、その上が厨房施設。 さらに上にテント用スペース。  もっと上の少し離れた所に、おそらくはバンガローがあったのだろう場所もあった。 そこはさすがにもう取り壊されて、敷地に土台のコンクリート跡が残っているだけだったけど。  駐車場の入り口は鍵が壊れちゃってて、完全に扉が開いていた。  あと、水道は使えなかった。 当たり前か。
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