十三章

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訂正?なんのことだろうかと、首を傾げた。  その僕に、翼さんは何かを堪えるように眉を寄せてから、笑った。 「あの時、あたしを見つけてくれたのが……他の誰かじゃなく『あなたで』良かった。  ――ありがとう」  そう言って、はれやかに笑う。 驚いて立ち尽くす僕を置いて、彼女はくるりと身を翻して車に戻っていった。  僕は車が走り去っても、その場に呆然と佇んでいた。  だんだんと顔が赤らんでくるのが分かって、慌てて俯いて歩き出す。  ようやく足を止めたのは、電車が出たばかりらしい人気のないホームの端だった。  誰もいないのをいい事に、ベンチの真ん中に腰を下ろす。  背凭れに身体を預けて、天を仰いだ。 長く息を吐き出して脱力する。 そして、両手で顔を覆った。  ……は、恥ずかしい。 照れ臭い……。  ああいう好意をどストレートに表されることに慣れていないんだ。 反応に困ってしまう。  スマートに答えられない自分が、なんとも照れ臭く恥ずかしい。 もういい年なのにい。 「……りょうたろう」  『こと』が話しかけてきて、照れ臭さも倍増する。 「やめて、今は話しかけないで……」 「……」 「あんな本気のありがとうなんて、言われ慣れてないんだよ、僕……」 「……」 「でも、あんな風に言われると、ちょっとこっちが感動しちゃうよね。  いいなあ……中学生って、素直で。  僕も、真理子ちゃんみたいに先生とか目指そうかな……」 「……」 「……『こと』?聞いてる?」 「……」 「『こと』さん?返事してよ」 「今、話しかけないでと……」 「すいません、僕が悪かったです」 「……りょうたろうは、わりと人からこうして感謝されることが多い気がするぞ」  そんな事を言い出されて、僕は瞳を見開く。 どうしたというのだろう、『こと』までそんな事を言い出すとは。 「どしたんだよ、『こと』まで、そんな僕を嬉しがらせるようなこと言い出すの、なんの陰謀!?」 「何も企んではいない」 「帰りに、コンビニでアイス買わせる陰謀とか」
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