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次に気がついたときには、僕は病院のベッドに寝かされていた。
「翔太くん! よかった……気がついたんだね」
目を開けて最初に視界に飛び込んできたのは、またしても彼女の泣き顔だった。
僕の回復をずっと待っていてくれたのか、彼女は目の下に青いクマを作り、どこかやつれたような顔をしていた。
どうやら僕は、あれから二週間ほど昏睡状態にあったらしい。
こうして意識が戻ったのも、医者曰く、もはや奇跡としか言いようがないという。
(奇跡……か)
もしかすると、流れ星が僕らの願いを叶えてくれたのかもしれない。
あの日はちょうど流星群の日だったから。
彼女が、僕を助けてほしいと星にお願いをしたのかもしれない。
けれど、それを彼女に話してみれば、
「流れ星? ……あー。そういえば、あの日はちょうど流星群が見える日だったんだっけ?」
すっかり忘れてた、と言って彼女は笑った。
どうやら僕が助かったのは、流れ星とは関係がないらしい。
まあそりゃそうか。
あんなのは結局ただの迷信だし――と納得しかけて、僕はふと、あのとき僕が捧げた、たった一つの願い事を思い出した。
「……ねえ、美月。美月にとっての一番の幸せって、何?」
「えー? そんなの決まってるよ」
彼女は少しだけ照れくさそうに笑うと、幼い頃から変わらない、いつもの無邪気な笑みを浮かべて、
「翔太くんと、こうしてずーっと一緒にいられることだよ!」
そんな恥ずかしいセリフを、惜しげもなく言い放った。
(ああ、そうか)
この世で最も愛しい人の笑顔を見ながら、僕は納得した。
あの流れ星たちはやはり、僕の願いを叶えてくれたのだ。
病室の窓から空を見上げると、深い藍色に染まったそこには数え切れないほどの星たちが瞬いていた。
今にも降ってきそうなその燦然たる輝きを眺めながら、僕はきっと、この世界で一番の幸せ者なんだろうな、と思った。
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