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ある流星群の日に、彼女が言っていた。
「翔太くんが、ずーっとしあわせでありますように!」
無邪気で楽しげな、幼い声。
言い終えるなり、照れくさそうにこっちを見て笑った彼女の顔を、僕は今でも覚えている。
その日、僕らはお互いの両親に連れられて、星空がよく見える丘に立っていた。
忘れもしない、小学一年の夏のことだった。
「ほら、翔太くんも早く! 流れ星、見えなくなっちゃうよ!」
頭上を幾筋も流れていく星々を指差しながら、彼女は僕を急かした。
「ま、まってよ。願い事って……美月ちゃんは、さっきの願い事で本当にいいの?」
僕が幸せであるように、だなんて。
せっかく願い事をするのなら、もっと自分のためになるようなものにすればいいのに。
「うん、いいの! わたしは、翔太くんがずっと笑っててくれる方がうれしいから!」
そんな恥ずかしいセリフを惜しげもなく言い放った彼女を見て、僕らの親は「あらあら」と可笑しそうに笑った。
やがて、彼らの期待の込もった視線は僕の方へと向けられる。
この状況下で口にできる願い事はただ一つ。
そんなことは、いくら幼い僕にでも容易に想像することができた。
「……わ、わかったよ。……美月ちゃんが、ずっとしあわせでいられますように!」
半ばヤケになって口にしたその願い事は、その後の僕の人生を決定づけるものとなった。
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