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僕は、目を覚ました。僕は、この狭い部屋でいったい何をしているのだろう。
壁は薄く、天井は吹き抜け、かなり薄暗い、広さは2畳ほどだろうか、部屋とは言い難い場所。僕は今、この空間から出られなくなっている。
しかし手足は縛られておらず、スマホも手元にあった。すぐにスマホの画面を見た。
「11:55 7月14日 日曜日」
僕が覚えている最後にスマホを見た時間は「10:05 7月14日 日曜日」だったと思う。あれから2時間近く経っていたのか。だがその2時間の意識がない。
スマホの電波は「圏外」を表示している。この建物はどうやらWi-Fiが通っているようだが、どれもパスワードが必要でこの空間にはパスワードを示すようなものは無い。
早くここを出なければならないのに、それができない。
どうやらここには、僕と同じように身動きが取れない人がいるようだ。僕が今いる狭い部屋みたいなものが他にもたくさんあって、それぞれに人がいる気配がする。疲れ果ててしまって寝ているのか、寝息も聞こえてくる。みんなも僕と同じようにここから出られないのだろうか。そう考えると、少しほっとした。
だが、僕は早くここから出なければならない。僕は今日、彼女と出かける予定なのだ。だから何としてもここから出なくてはいけないんだ。しかも、彼女との待ち合わせ時間は「12:00」だ。あと5分しかない。それなのに僕はここから出られない。今の状態を彼女にすぐに伝えたいが、「圏外」の2文字が邪魔をする。
焦りを感じながらも僕はだんだんと気持ちが変わってきた。彼女には申し訳ないが、もうどうすることもできない。僕はこのまま、ここから出られないのかもしれない。もう諦めたほうが良いのかもしれない。
なぜなら、ここには僕の大好きな漫画とパソコンと、ドリンク、ポテチのある地下のネットカフェなのだから。
あと5分では出られない。
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