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 東大を卒業した良彦は、経済産業省に入省した。  三十歳を目前に控えた良彦は、すこし焦っていた。同期が次々に結婚し、独身は良彦などわずかだ。 「星野。役人が出世するには、早く身を固めることだ」  寿司屋で上司からも言われ、良彦は二枚目の短冊を使った。 『女優の石原環奈と一年以内に結婚できますように』  良彦は石原環奈の大ファンで、それも婚期が遅れている原因だった。ただ、短冊に書いたものの、さすがに無理だろうと思っていた。  ところが、良彦が短冊を吊るした翌日、文部科学省のPRに人気女優の石原環奈が抜擢された。  文科省役人の良彦の同級生がPRの担当になり、気を利かせた同級生が、石原環奈との打ち合せの後、食事会をセッティングしてくれた。  その後LINEを交わすようになった良彦と環奈は一年後に結婚。子宝を授かった石原環奈は、芸能界を電撃引退した。  二つ目の願いも叶った。
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