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 良彦は五十歳になっていた。  衆院議員として二回当選し、三回目も当確といわれる、将来有望な議員だ。 次期内閣では経産大臣とも噂されている。  公私ともに順調だ。  平日は東京ですごし、週末だけ妻子が待つ地元に帰る生活を十年ほど続けている。  地元の支援者とは、元女優の妻がパイプ役になり盤石だ。  地位も名誉も手にした良彦は、東京に愛人を囲うようになった。  銀座の高級クラブのホステスで、妻とはまた違った、品のある色気に惹かれた。右の内腿に刺した薔薇の刺青(タトゥー)が似合っている。 「良彦さん、文春とか大丈夫?」 「心配ないよ。僕は国に守られてるから」 「そうよねぇ。次期大臣!」 「バカ、からかうなよ」 「アハハ!……でも、ホテルで密会するの、疲れちゃって……」  帝国ホテルのスイートがいつもの場所だ。 「たしかに。費用もバカんなんないし、マンション買うか」 「えっ? ほんとに?」 「ああ。じつは、コンシュルジュつきのセキュリティ万全のタワマン、手付け入れたんだ」 「ええっ? 嬉しー」  笹の妖精のおかげで、順風満帆の人生を歩んでいた。  
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