4人が本棚に入れています
本棚に追加
7
良彦は五十歳になっていた。
衆院議員として二回当選し、三回目も当確といわれる、将来有望な議員だ。
次期内閣では経産大臣とも噂されている。
公私ともに順調だ。
平日は東京ですごし、週末だけ妻子が待つ地元に帰る生活を十年ほど続けている。
地元の支援者とは、元女優の妻がパイプ役になり盤石だ。
地位も名誉も手にした良彦は、東京に愛人を囲うようになった。
銀座の高級クラブのホステスで、妻とはまた違った、品のある色気に惹かれた。右の内腿に刺した薔薇の刺青が似合っている。
「良彦さん、文春とか大丈夫?」
「心配ないよ。僕は国に守られてるから」
「そうよねぇ。次期大臣!」
「バカ、からかうなよ」
「アハハ!……でも、ホテルで密会するの、疲れちゃって……」
帝国ホテルのスイートがいつもの場所だ。
「たしかに。費用もバカんなんないし、マンション買うか」
「えっ? ほんとに?」
「ああ。じつは、コンシュルジュつきのセキュリティ万全のタワマン、手付け入れたんだ」
「ええっ? 嬉しー」
笹の妖精のおかげで、順風満帆の人生を歩んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!