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 良彦は市議会議員やゼネコン業者と共に、地元の笹山を見上げていた。 「いやぁ、広大な敷地ですねぇ……」 業者が嘆息する。 「この一帯がリゾートヴィラに生まれ変わる。想像しただけでワクワクするよ」 「でも先生、相当反対もあると思いますが……」 「大丈夫、僕に任せてください。この街を発展させるには、思い切った改革が必要なんです。雇用も生まれるし、誰も損しない!」  良彦の手腕で、地元は経済特区になり、百数十億円の費用は国庫負担にした。  一年半後工事が始まると、議員事務所に父親から電話が入った。 「良彦おまえ、約束が違うじゃないか……」  リゾート開発の件で帰省したときに父親から、開発はやめてくれと頼まれたいたのだ。 「良彦。笹山は潰さんていうとったよな」 「……ごめん。僕も最後まで反対したんだけど……僕にもいろいろあるんだよ……」 「まぁ男の仕事だ、あるだろう。ただな、工事が始まったとたん、笹の花が咲いたんだよ。花が」 「え? 花?……」 「ああ! 百二十年ぶりだそうだぞ」 「それはすごいね。けど、だから……?」 「バカもん! 良彦、知らんのか? あの花はなぁ——」 「ごめん父さん、打ち合わせだから、切るね」 「おい! 良彦——」  良彦は嘘をついて電話を切った。 父親との約束を反故にした後ろめたさと、説教が面倒だと思ったからだ。  開発に反対したのも嘘で、良彦は積極的に進めた。  愛人の響子は、幾らでもか金がかかる女だった。マンション、高級外車、年に数回の海外旅行。次は自分の店を持ちたいと言っている。  良彦は妻子も愛しているが、響子にも惚れていた。金の工面のためにはじめた仮想通貨でも、大損していた。  ゼネコンからはたっぷり、バックマージンを受け取っている。  今更後には引けなかった。
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