「退屈だな」

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放課後 天気が良かったため外をのんびりと歩き、目的の場所へ向かう。 周囲を緑に囲まれ、少々年代を感じさせるが、それすらも独特な雰囲気を漂わす場所。 戸を開けると、金具の擦れる古めかしい音、一歩足を踏み入れたその先には一面の古書たち。 如月学園 第1図書館。 生徒たちが主に利用する図書館である。 「あ、緋扇君」 「こんにちは、佐々木さん」 広い図書館の一角。カウンターの中から声をかけられる。 この人は、さすがお金持ち学校というべきか、県内屈指の蔵書数であるこの図書館の本を管理する職員。 つまりは、司書さんだ。 初等部から高等部までそれぞれに図書館はあるが、高等部にある第1図書館は蔵書数が他より多く、どの年代でも利用可能だ。 俺も初等部から利用していて、佐々木さんにはその頃からお世話になった。 「今年は緋扇君が担当してくれることになったんだよね、嬉しいな」 嬉しそうにニコニコ笑う佐々木さんに、ほっこりする。 「はい。神崎先輩が是非にと誘ってくれたので」 「やっぱりか、神崎君ってば緋扇君の事大好きだったから」 卒業前に決まって嬉しかっただろうね、と話す佐々木さんに笑みを1つ返した。 そうして立ち話終え、奥のカウンターへ移ろうとすると、呼び止められる。 振り向くと、いつになく真剣な顔付きをした佐々木さんが、静かに告げた。 「これからよろしく、緋扇 尊君」 その言葉に、小さく目元が緩む。 しかし、相手は真剣。こちらも誠意を返そう。 「えぇ。誠心誠意、図書委員長のお役目努めさせていただきます。よろしくお願いいたしますね、佐々木司書様」
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