「あなたの笑顔が曇らぬように」

40/44
前へ
/183ページ
次へ
週に何度か回ってくる当番の日。 この日は第3図書館。 アノヒトは、第2図書館に篭りきり。 本来委員長とはそういうものらしいが、少しくらい姿を見せても良いのにと不相応な望みを持ってしまう。 今だってそうだ。 古びた戸の開閉音が鳴るたび、意識はそちらに向かってしまう。 そうして。 「………っ」 小さな望みが叶う瞬間は、あまりにもあっけないものだった。 絡め取られた視線に、反射的に身体が火照る。 そしてすぐにそらされた視線になんで、どうしてと身勝手な欲が出る。 それでも今日は視線を交わせた。姿が見れた。その事実があればいい。 そう、思って、いたのに。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1282人が本棚に入れています
本棚に追加