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揺れる長い髪と背筋が伸びた後ろ姿を眺める。
一人になってやっと、先ほどのことが現実であると自覚した。
己の両の手と頬に触れた、体温の低い手の感触。
縋り付くように抱きすくめた華奢な身体から移った温度。
自らの瞳に残る痛いほどの熱。
おれは、いったい、何を。
自覚した途端、湧き上がる羞恥心に両手で顔を覆った。
多分耳どころか首まで赤くなっているだろうその事実に、自分がこんなに余裕がない男だったかと打ち拉がれる。
自分の態度が招いたこととはいえ、嫌っていると誤解され、勝手に悲しんで、怒って、悔しくて。
果てには泣いてしまうなんて。
「かっこ悪い…」
アノヒトはこんな俺をどう思っただろう。
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