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答えはすでに決まっている。
この人が、こんなにも、俺に心を砕いてくれるから。
「俺で、よければ」
噛みしめるように口から出た言葉は、紛れもなく本心だった。
俺の言葉で嬉しそうに笑うこの人も、釣られて笑う俺も、夕日に照らされて。
その眩しさに目を細める。
「あなたの笑顔が曇らぬように」
俺は、精一杯尽くします。
囁いた言葉は同時に響いたチャイムにかき消された。
「では、帰りましょう。…蛍」
「っ……はい、尊」
先ほどとは180度違う景色。
違う立場。
頭一つ分違う、綺麗な顔を見下ろす。
まさかこの人の隣を歩くことができる日が来るなんて。
「どうかしました?」
不思議そうに見上げる顔に笑みを返す。
「なんでもないですよー」
あぁ、俺は。
世界一幸せ者だ。
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