「ーーー気がつかなかったのか、自分が笑っていた事にも」

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蛍が目元を緩め頷いたのを確認し、カウンター内のカバンを手に取る。 「………ん?」 カウンターの上に何かある。 よく見てみると、そこにあったのは一輪の花だった。 「菖蒲の花…?もしかして」 菖蒲の花で連想できるものは一つ。 あいつが、来たのか? 「尊?」 花を手に取り動かない俺を不審に思ったのか、蛍が声をかける。 あいつが来たとすると……。 「……蛍、あなたが来た時、ここに誰かいましたか?」 「え?…いーえ、誰もいませんでしたよー」 考えるように目を閉じて答えた蛍に、姿を見てはいないようだと頷いた。 「あ、でも」 「はい?」 「ここに来る途中でー、風紀委員長とすれ違いましたよ。俺、あんなに近くで見たの初めてですー」 そう、か。 「やはり……」 来てたのか。 だとすると、ちょっと、勿体無かったな。
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